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第二百九十九章 コン・ゲーム~始動~ 8.クロウ陣営(その3)

(いや……基本的に土地の所有権は王家にあるのが普通。亡命と移籍のドサクサに(まぎ)れてこんな取引を受けたというなら……やっぱりかなりの博奕(ばくち)打ちだろうな)



 そんな冒険的な性格であれば、商路や商品の開拓のために他国へ乗り出す事ぐらいはしそうだ。それが裏目に出て難破した……というのはありそうな話に思える。

 だが、それはそれとして――



(その博奕(ばくち)()ちが何故(なぜ)、この取引に同意した?)



 土地の取得が狙いだったとして、この土地には危ない橋を渡るほどの取り柄があったと言うのか?


 そこで改めて問題の土地について検分してみたが、ガベルとマルクトを結ぶ主要街道が傍を通っている事ぐらいしか、取り柄と言えそうなものは見当たらない。通行人相手の宿でも開けば、それなりの定期収入を得る事はできそうだが、



(こいつがそんな地道な商売を狙うタマか?)



 下手をするとテオドラム王家に睨まれる危険すら冒して得た土地を、そんな地道な商売に投資するだろうか? 博奕(ばくち)()ちというプロファイリングにも合致しないように思える。


 とは言え、(くだん)の土地の取り柄として、街道脇という点が筆頭に挙げられるのも事実。狙っていたのが何であれ、この立地を活かす事業であったと考えるのが妥当だろう。



(……待てよ? 唯の街道じゃない、ガベルとマルクトを結ぶ街道だよな?)



 どちらも(いず)れ劣らぬ交通の(よう)(しょう)であり、共にアムルファンに隣接しているが……正確に言えばガベルにはアムルファンとヴォルダバンからの街道が通っており、マルクトにはアムルファンとイスラファンからの街道が通っている。

 つまり――問題の街道は、沿岸国三国からの荷が往来する可能性があると言える。こんな街道は他には無い。そう言う意味ではテオドラムでも指折りの重要街道であろう。

 そして――これこそが本来の契約者が目を付けた点だとすると、狙いは積荷、それも海外からの舶来品という可能性が強い。しかも、ガベルやマルクトの仲買人を通さず、或いは彼らより早く商品を入手できるため、〝早い、安い〟を実現できる事になる。


 これが益となるのは、舶来品を早く手に入れる機会の無い、或いは少ない商人ではないか? そして、それを売り(さば)いて利を得るというなら、売り付ける相手も同じ状況の筈。



(……とすると、こいつは沿岸国から遠い国の商人か? 例えばモルヴァニアとか?)



 契約者の出身地について興味深い仮説が浮き上がって来たが、それはひとまず脇に()き、改めて商品の入手方法について考えてみよう。

 狙いが舶来の積荷だとしても、どうやってそれを手に入れるつもりなのか。



(積荷を狙っての盗賊商売……ってのもおかしいか? 態々(わざわざ)自分の所有地で追い剥ぎをやらかす理由は無いしな。となると、やっぱり宿屋か料理屋か?)



 ガベルやマルクトの仲買人を介さずに舶載の品を入手できれば、商売としての旨味は多い。運搬者を引き込んでの(じか)()いというのはあり得る話だ。

 だがそれでも、売り手が仲買人から運搬者に変わっただけで、依然として売り手市場という事に変わりは無い。そこを押して運搬人を引き込むには、他に無い〝売り〟が必要な筈……


 ここに至ってオッドは、自分の目で現地を調べる必要性を感じた。

 そうして現地を(つぶさ)に見て、地元の人間から()り気無く聴き取りをした結果突き止めたのが、先に挙げた()萄園(どうえん)のネタであった。


 ……成る程。クロウが(いた)く感心する訳である。


 ともあれ――



・・・・・・・・



『これで種の仕込み(・・・)は終わったな?』

『はい。後は芽吹いた苗からの花蜜や実を巡って、踊る者たちを見ておけばいいかと』

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