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第二百九十九章 コン・ゲーム~始動~ 6.クロウ陣営(その1)

『予想とは少し違った形になったが、まずは上出来だな』



 ほとんど有名無実化した古証文をテオドラム王国に売りつけるという、どこから見ても悪辣(あくらつ)詐欺(さぎ)としか思えない取引をしてのけたのだ。不成功と言うには当たらないだろう。しかし……



『ボスの期待を裏切るような結果に終わってしまい、申し訳ありません』

『気にするな。あんな事態は俺にだって誰にだって想定できん』



 それでいてなお、〝想定外の結果〟に終わったというのはどういう事か。その答というのは……



『まさか係争地の目と鼻の先でダンジョンシードが発見されるなんて、誰にも予想できんだろう』



 ――これである。


 クロウたちの当初の予定では、証文を盾に土地を()(しゅ)するのは難しいだろうとして、その証文をどこか第三国へ売っ払うつもりでいた。

 何せ問題の土地というのが、マルクトとガベルを結ぶ街道を睨む位置……もっとはっきり言えば、テオドラム有数の主要街道を(やく)し得る位置にあるのだ。

 そこまで踏み込まないとしても、テオドラムに嫌がらせできる口実になるというだけで、値付けにさえ欲を掻かねば売り手市場の筈であった。


 ところが……あろう事かその土地から遠くない国境部で、ダンジョンシードの発芽が発見されるという椿(ちん)()(しゅっ)(たい)する。「ダンジョンロード」などというジョブを得たクロウとしては、当然このダンジョンシードの保護に当たらねばならない。

 と、なると……ダンジョンシードを保護している場所の近くで、テオドラムや第三国の行動が活溌になるというのは好ましくない。それを避けようとするなら、当該地に第三国を呼び込む策は捨てざるを得ない。


 つまり、クロウが採り得る「嫌がらせ」としては、テオドラムから金銭を巻き上げる事しか残されていない……


 ……と、それくらいで諦めるようなクロウであれば、関係・無関係の各位から、「災厄の主」などという尊称を奉られたりしない。眷属一同が知恵を巡らせ、この時もしっかり代替策を講じていた。



『オッドの予想どおり、決済は新金貨でと持ちかけてきたからな』

『はい。その幾つかを贋金にすり替えるのは簡単でした』



 ――これである。


 塩漬けになっている新金貨の活用の場として、証文の売買を利用するのではないかというのは、オッドが早くから指摘していた可能性である。当然、それに対する策も幾つか考えてあった。

 今回採用したのはその一つ、支払われた新金貨の幾つかを、(あらかじ)め用意していた贋金にすり替えるというものである。


 そこから後の事を気にする必要は無い。


 ()れ手に(あわ)(あぶく)(ぜに)を抱えた異邦人を、そのまま温和(おとな)しく帰すほど、アムルファンの商人は君子ではない。あの手この手で商品を売りつけようとするだろう。こちらはその支払いを、テオドラムから受け取った新金貨――贋金混入済み――で決済すればいい。

 テオドラムの贋金貨の件は、アムルファンの商人なら熟知しているだろうから、品位を確認するのは(ひつ)(じょう)。そこで新たに贋金貨が見つかれば……



『テオドラムが行なったであろう新金貨の抜き取り検査、その信頼性に疑問が生じる訳だな』



 後は再度の塩漬けが決定する。

 全数検査で信頼性を高めようとしても、二度に(わた)って贋金の混入が発覚したとなると、テオドラムの新金貨が信用を回復する日が来るかどうか。嫌がらせとしては中々のものになるだろう。


 これだけでもクロウ的には(きゅう)第点(だいてん)なのだが、有能なる我らがオッドは、それに加えて更なる戦果を積み上げてきた。

 当外地の一画に小さな()萄園(どうえん)の跡地――小屋付き――があったのだが、そこへの優先居住権をもぎ取ってきたのである。

 近くにダンジョンシードの保護地がある事を(にら)んで、ダンジョンゲートの設置を視野に入れてのものであったが……それだけではなかった。



『ブドウの生き残りと害虫個体群、それが手に入ったのは大きいな』

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