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第二百九十五章 サウランド~猜疑は踊る~ 8.アムルファン商業ギルド視察団(その2)

 ……違う。

 グレゴーラムの司令官は、そんな意図で一個中隊を派遣した訳ではない(・・)

 盗伐のための部隊を新たに編成する手間を嫌ったのと、必要な燃料を運ぶのに小隊規模では不充分であった事、更にはイラストリアと小競り合いになった場合を考えて、中隊をそのまま派遣したのだ。まぁ、後の二つはほとんど後付けで、ちまちま分ける面倒を嫌ったというのが本当のところであったのだが。


 早い話が、ロスト・ダンジョン攻略のために敢えて一個中隊を派遣した訳ではないのだが、世間の常識に照らし合わせたところ、そうは見えなかったというだけである。ただ……あまりに非常識的な対応であったためか、常識人を自認するアムルファン商業ギルドの面々が、或る意味で脱力ものの真相に辿(たど)り着く事は無かった。


 ――つまりは誤解が正される事も無かったのである。



「そして――グレゴーラムの一個中隊は、モンスターに惨敗を喫した訳か……」

「ダンジョンのモンスターには、知能の高いものも多い。この件が切っ掛けとなって、テオドラムを敵だと見定めた可能性も捨てきれん」

「危険度は更に跳ね上がった訳か……」



 事ここに至っては、テオドラムも「ロスト・ダンジョン」の財宝を諦めるのではないかとの見方も成り立つのだが、



「いや……そう結論するのは早いかもしれん」



 ――などと言い出した者がいたせいで、一同は憂慮の色を深める事になる。



「……何か案じる事でもあるのか?」

「このところ噂になっている金鉱床の話だ。諸君らも耳にはしているだろう?」

「あぁ、あの話か」

「マーカスが『災厄の岩窟』で金の鉱床を発見したとか、その金は上流から流れて来た砂金だとか、そんな話だったな」

「そうだ。そして――その噂の出所がどうやらテオドラムらしい」

「そう言えばそんな話も……待て、テオドラムだと?」



 何かに気付いたように一人が声を上げると、それにつられたかのように、其処(そこ)彼処(かしこ)で同じような(うな)り声が上がる。



「……『ロスト・ダンジョン』攻略に失敗し、財宝を入手し損ねたテオドラムが、それとは別口で金鉱床の噂を流したというのは……」

「『ロスト・ダンジョン』から目を()らさせるための工作だろうな」

「そうまでして『ロスト・ダンジョン』の件を隠し通したい理由は」

(いま)だに攻略を諦めていないから……という事にならんかね?」

「「「「「う~む……」」」」」



 下手をするとマーカスへの侵攻ではなく、イラストリアへの侵攻が現実となるかもしれぬ。



「いや、しかし……テオドラムがそこまでの危険を冒すか? 唯でさえマーカスやモルヴァニアとの仲が怪しくなってきているのだぞ?」



 国際的に孤立している状況で三正面作戦に踏み切るなど、テオドラムもそこまで愚かではないだろう。たかが一握りの財宝のために、国の存続を危うくするなど本末転倒ではないか。



「そこで次の可能性が出て来る。いや……〝可能性〟と言うよりは、妄想憶説の類なのだが……」

(のう)()きはいいからさっさと話せ」

「うむ、是非ともその〝妄想憶説〟というのを聞かせてもらおうではないか」

「ならば言うが……テオドラムがこのまま矛を収めるのならよし、そうでないなら……彼らが狙っている『財宝』というのが、通り一遍のものではない可能性が出て来る」

「ふむ……?」

「これも前々から言われている話だが……イラストリアのノンヒュームが、突如として成果を出し始めたのはどうしてなのか。まるで、どこからかその『知恵』を得たようだ……という話を聞いた事は?」

「「「………………」」」

「おぃ……まさか……」

「『ロスト・ダンジョン』の中に『ロスト・テクノロジー』。()わりが良いとは思わんかね?」

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