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第二百九十五章 サウランド~猜疑は踊る~ 3.クロウ陣営(その1)

 ……などと、どこまでもトンチキな〝計画〟をぶち上げてテオドラム出身の二人が気炎を上げている姿は、国境林内に密かに設置した監視システムによって、その一部始終がクロウ一味の知るところとなっていた。

 そしてその〝計画〟は、クロウたちを大いに困惑させる事になっていたのである。



・・・・・・・・



『……どう思う?』

『『『『『はぁ……』』』』』



 クロウの問いかけに対しても、眷属たちは当惑の声を返すばかり。だが、それも無理のない事だと言えよう。


 (そもそも)サウランド近郊の国境林は、ただでさえ三ヵ国の国境が会合する部分にある上に、木材資源に困窮するテオドラムの住民が盗伐を繰り返していた場所である。意図せざるタイミングでの紛争発生を喜ばぬイラストリアの方針として不干渉を決めていた上に、冒険者たちも面倒に巻き込まれるのを嫌って立ち入りを敬遠していたため、クロウたちが拠点を設けるのに好都合な状況にあった。

 それに加えて、ここ(しばら)くの国際情勢の変化から、テオドラムの動きを監視する拠点の整備拡充は喫緊(きっきん)の課題となっていたため、当該地に拠点を設けるのは、半ば既定の方針となっていた。


 ところが……ひょんな巡り合わせから、(くだん)の国境林に「幻のダンジョン」があるのではないかとの疑いが持たれ、冒険者ギルドによる現地調査が実施される運びとなる。存在の秘匿を第一とするクロウの方針に(かんが)み、拠点候補地の現地調査は順延せざるを得ず、クロウのイライラは募っていった。

 そんなギルドの調査も(つつが)()く終了し、やれやれこれで調査にかかれると思った矢先に、今度はテオドラムの冒険者二人組が出しゃばって来る。いい加減、実力行使に訴えるべきかとクロウが思案しだした頃に、当の二人組が言いだしたのが〝ダンジョンの跡地〟……()わば「ロストダンジョン」とでも言うべきアイデアであったため、クロウも思わず考え込んだ……というのがここまでの経緯(いきさつ)であった。



『俺個人としては中々に捨て難いアイデアだと思うんだが……問題は、この場所で採用していいものかどうか――なんだよな』



 これまでクロウの拠点としては、①明瞭なダンジョン、②ダンジョンではあるが存在を秘匿(例.クレヴァスやオドラント)、③ダンジョン以外のものとして認知(例.アバンやマナステラ)、という三つのタイプが存在した。

 サウランド近郊の国境林では②のタイプ――ただしダンジョンにするかどうかは未決定――を考えていたのだが、ここへ来て③の新たなサブタイプ案が浮上してきたのだ。これは検討に値する案件だろう。



『第一に……彼らの……言うような事が……実際に……あるかどうか……確かめる……べきかと……』



 それもそうだという話になり、この手の事に詳しそうなダバルとフェル、並びにネスに話を聴いてみたところ、



『……あり得ない話ではない訳か』

『『『はい』』』



 彼らの話を綜合すると、ダンジョンが死を迎えた場合、コアの魔力だけで維持されていたような小規模ダンジョンだと、魔力の供給を失ったダンジョン壁が倒壊・崩落して潰れる事が多い。

 しかし、既存の洞窟を拡張したタイプや、長年に(わた)る魔力の供給によって堅牢化したダンジョンの場合、必ずしも倒壊や崩落は起きず、空洞としての構造が維持される事もあるという。

 更に、ダンジョンの壁が一旦取り込んだものの、吸収されずにそのまま残った遺物――所謂(いわゆる)ダンジョンドロップ品は、壁の風化とともに露出し、その後土砂に埋没していく事があるという。



『ですから、頻度は多くないにせよ、あの者たちが言っているような「跡地」が無い訳ではありません』

『それっぽい場所を造っても、一応の説明は付く訳か……』



 何やら考え込む様子を見せるクロウの姿に、眷属たちが顔を見合わせる中、シャノアが質問の口火を切る。



『ねぇクロウ、何か悩む事があるの? ダンジョン跡地を造るって事は、人間たちにそれを見つけさせるって事でしょ? 面倒なだけじゃないの?』



 眷属一同が(うなず)く中、クロウが思案の内を話すところでは、



『いや、それは確かにそうなんだが……監視拠点の出入口の問題があったろう?』

『あぁ……アレがあったわね』

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