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第二百九十五章 サウランド~猜疑は踊る~ 2.国境林(その2)

「ちったぁ頭を使え。いいか? イラストリアのやつらぁさんざっぱら森に入ってやがんのに、モンスターに襲われた事ぁ()ぇんだ。イラストリアのやつらがモンスターと結託してる……ってんじゃなきゃ、思い当たる節は一つだけだろうが」

「一つだけ……?」

「おぅよ。グレゴーラムの間抜けどもは、大人数で大挙して森に押し掛けやがったってんだろ? そりゃ、森のモンスターだって警戒すらぁ。対してイラストリアのやつらぁ、小人数で入ってるから大丈夫なんだよ」

「つ、つまり……?」

「俺たちみてぇに小人数で入るんなら、モンスター様だってお()(こぼ)し下さろうってもんだろうがよ」



 自信たっぷりに言い放つボックに、デックも成る程と納得したようだが……(そもそも)の前提に大きな誤りがあった。イラストリアの冒険者たちは、三国の国境が接する面倒な場所だというので、基本的に国境林には立ち入らないのだ。

 それを差し引いても我田引水の解釈であるが、デックはなぜか納得したようだ。


 ただ……そんなデックにも納得できない点はあった。



「けどよボック、そりゃこっちから手を出さなけりゃ見逃してもらえるかもしんねぇけどよ……それが何になるんだよ?」



 安全は担保されても、利益の保証が無いではないか。ダンジョンの抜け殻など探し出したところで、そこにいる筈のモンスターを狩らないならば、自分たちに何の儲けがあるというのだ。



「だからよ、目当てはお宝だっつったろうが。シャルドのダンジョン跡地からは、金銀のお宝がザクザク出たってぇじゃねぇか」

「な、成る程……」



 ……同じシャルドというだけで、古代遺跡と封印遺跡をごっちゃにしている。モローのダンジョン跡地の話も、幾分かの風味付けに寄与しているかもしれない。

 もうこの時点で構想――と言うより妄想――が()(たん)しているのだが、同じテオドラム出身の哀しさで、デックの知識も似たようなものであったため、素直に誤解を丸呑みしてしまう。


 ただ、それを容れてもなお納得できない部分があった。



「……いや、ちょっと待てよ? その……お宝があるってダンジョン跡地には、モンスターが棲み付いてんだよな? ……そいつはどうすんだ?」



 モンスターが出払ったタイミングで潜り込んで探すのか? それでもかなり危険な気がする。宝探しに夢中になっているところへモンスターが戻って来たら、自分たちは袋の鼠ではないか。

 それだけではない。何と言ってもモンスターの大群が隠れられるほどの大洞窟なのだ。全てのモンスターの所在を把握できると楽観するのは危険だろう。宝探しに(いそし)しんでいたところ、曲がり角からモンスターが現れた……などという展開は御免を願いたい。



「だから手前は馬鹿正直だって言われるんだ。何も俺たちがモンスターを相手にする必要は無ぇだろうが。この国にゃあ、そういった荒事が得意な連中がいるじゃねぇか」

「……この国の、冒険者……か?」

「おぅよ。俺たちゃモンスターをめっけた後、それをギルドに御注進すりゃいいんだ。そうすりゃ厄介なモンスターが片付いた後で、じっくり腰を据えてお宝探しにかかれるって寸法よ」

「おぉ……成る程」



 どこまでも我田引水で他力本願な、計画と呼ぶのも烏滸(おこ)がましいような代物であったが、自分たちが負うリスクは小さいと解ったところで、デックも(もろ)()を挙げて賛成に廻る。そうと決まれば、後はある筈のダンジョン跡地を探すだけだ。



「それなりの数のモンスターを収容できて、しかもイラストリアの冒険者(まぬけども)が気付かないような場所ってなぁ、そう多くはねぇ筈だ。気合いを入れて探しゃあ()ぐに見つからぁ。やるぞぉ!」

「おぉよ!」

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