第二百九十四章 「盗掘者のカタコンベ」~新作ダンジョン@マナステラ~ 19.お宝掘り出し会場~比喩でなく~
「お、お宝だって!?」
魅惑的なワードを耳にして俄然目の色を変えたペスコ、猛然とその辺りを掘り返そうとするが、兄貴分たるクラブに一喝されて潮垂れる。
「ちったぁ落ち着け! ……いいか? ①ギルドの連中が泡喰って飛び出してった。②ギルドの連中のものらしき足跡がこの辺りに残っている。ここから導き出される推測は?」
「……③この辺りはもうギルドの連中が調べ終わって、お宝は疾っくに回収されてる」
「よぉしっ、上出来だ」
となると、もう少し奥へと探査の手を伸ばさねばならないが、
「……嫌な足跡が残ってやがるからな。あまり奥の方へ行くと、腹を空かせたモンスターとご対面……てな事になるかもしれねぇ」
「ど、どうすんだよ?」
「とりあえずはギルドの連中の続きをするっきゃ無ぇな。やつらが漁った跡からあまり離れねぇようにして運試しをするか」
「そ、そんなんでお宝が手に入るのかよ?」
「……見てみな。ギルドの連中が穿った範囲は大して広くねぇ上に、そこまで深くも掘っちゃいねぇ。やつらがその程度でお宝をめっけたってんなら、俺たちにだって勝ちの目はあらぁな」
「そ、そうだよな……」
『マスター、あいつら、宝探しを始めるみたいですよ?』
『よぉ~し、よしよし。良い子にはご褒美をあげなくちゃいかんな。それなりの物を拾った後で、モンスターたちに軽く挨拶させるとしよう』
『仕留めないんですよね?』
『無論だ。あいつらにはこの場所の魅力と……そこそこのスリル付きって事を広めてもらわなくちゃならんからな』
「お……おひっ……ク、クラブ……!」
「何だよ変な声出しやがって? ……何か見つかったのか!?」
「こ、これ……」
「……!!」
ペスコが震える手で差し出したものを見て、さすがのクラブも息を呑んだ。
何しろその手の上には、古びているとは言え歴とした宝冠のようなものが載っていたのであるから。
『おぉ……いきなり大当たりを引いたな、あの男』
『ますたぁ、あれってぇ、狙ったんですかぁ?』
『いや、景品の配置は完全にランダムだ。運が良かったって事なんだろうが……』
『完全に目の色が変わっちゃいましたね』
『あんなものが拾えるとなれば、仕方の無い事じゃろう』
『……ねぇクロウ、ここって王家の墓か何かなの?』
『いや……基本的にちょいセレブくらいの被葬者を想定してるんだが……宣伝のためには一つ二つくらい大当たりがあってもいいかな――と』
『余計な気を回すのだけは得意なやつじゃ……』
『で……一見さんがその〝大当たり〟をいきなり引いた訳ね……』
『冒険者たちの……間で……この場所の……評価が……変わるかも……しれません……』
『う~む……』
クロウたちの困惑を他所に、クラブとペスコの二人組は夢中でお宝掘りに興じていた。何しろちょっと掘っただけで、宝冠なんて代物が飛び出て来たのだ。警戒など忘れて没頭するのも宜なるかな。
運が良いのか悪いのか、先程の宝冠のような大当たりには恵まれなかったものの、装身具などの小当たりはそれなりに引き当てているため、夢中になって土を穿り返しては、新たな場所へと移動していく。
……そんな二人は、いつしか部屋の入口から離れ、奥まった部分に足を踏み入れていた。
『……頃合いか。そろそろモンスターたちのご挨拶を受けてもらおう』




