表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/1809

第四十五章 シャルド 3.シャルド

現場編です。

 オンブリーら増援の派遣に遅れる事二日、宰相の(きも)()りで王都から派遣されてきた専門家は、宰相の遠縁の貴族であった。骨董(こっとう)好きの度が過ぎて、自分でも発掘に手を出すようになったという道楽者である。性根と気心が知れており、口の堅さもそれなりであると判断した宰相が、事と次第によっては実家の改易・断絶すらあると臭わせて脅迫……いや説得して一味に引っ張り込んだ。

 到着直後は我が身の不運を嘆いていたが、現場を見てオンブリーから説明を受けるやいなや、たちどころにその重要性を理解したのはさすがであった。



「……確かに君の言うとおりだ。上の方は通常の層位配列だが、例の物品が出土した地層の下は攪乱(かくらん)を受けてるな。……層位の攪乱(かくらん)は他の地点でも?」

「今のところ確認されたのはこの地図に示してある範囲です。まだ調査していない部分もありますが、おおよそこの辺りの層位が攪乱(かくらん)されているようです」

「遺跡らしきものが発見されたというのは?」

「こちらです」



 オンブリーは王都から派遣されて来た貴族――パトリック・ハーコート卿。どこぞの男爵家の三男坊らしい――を、新たに発見された遺跡のある区画へ案内した。



「ふむ……、確かに何らかの遺構のようだが……」



 ハーコート卿は今まで見た事のない「遺跡」の有様(ありさま)に戸惑っているようであった。



「オンブリー君と言ったね。この……遺構は、発見した時から、このように埋もれていたのかね?」



 オンブリーが案内したのは、クロウたちが造った「廃墟」の入り口――ただし本物の入り口ではなく偽の入り口の一つ――であった。そこは人頭大の石に覆われており、幾つかの石を取り除いた奥に、魔法陣で封印された扉(・・・・・・・・・・)のようなものが見えていた。



「はい。土を掘っていくとあからさまに妙な石がゴロゴロと出てきたので、自分の判断でその一部を取り除かせました。そうすると奥に遺構のようなものが見えたので、その時点で作業を中止し、現状を維持しました」

「その判断は適切だ。私もこんなものにお目にかかるのは初めてでね、正直何なのか見当もつかんが、普通の遺構でない事だけは確実だ。ここから先は慎重に作業した方がいいだろう」



 ハーコート卿はこの時点で、宰相らが希望していたような()(みつ)()の発掘は不可能と判断した。仮に層位が攪乱(かくらん)されている範囲を遺跡の範囲だと仮定すると、その範囲はかなり大きなものとなる。ちょっとした軍事拠点にすら使えそうだ。作業員だけでもどれだけの数が必要になるやら。こんな代物を密かに発掘するなんてどだい無理な相談だ。発掘そのものは公表して、公表する内容の方をコントロールした方がまだましだろう。場合によっては、適当なカバーストーリーを用意する必要も出てくるかもしれない。



「……とりあえず、ここはしばらくこのままにして、両側をもう少し掘ってみてくれないか。石で埋められている範囲が知りたい」



・・・・・・・・



 ハーコート卿は後年、この時の指示についてはほんの出来心だったと述懐している。まさかあんなものが見つかるなどとは思いもしなかったと。


 そう、新たな扉が更に二つも見つかるとは。

もう一話は王国編になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
とりあえず今できることを、と手を出してみたら、手に負えないことになっちゃったってやつだ… あるよ、うん、ある、ある。。。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ