第二百九十四章 「盗掘者のカタコンベ」~新作ダンジョン@マナステラ~ 12.骨のある奴(その2
白骨だけの身体は重みというものを欠くため、抗う事も叶わず弾き飛ばされるスケルトン。だが、その身の軽さを誇示するように、空中で軽やかに身を捻り、直線運動を回転運動に変えたかのようにその場に着地した。
「――なっ!?」
狙ったより遠くへ弾き飛ばせず、しかも体当たりを敢行したせいで、クロップは仲間から離れた位置にあった。……仲間の支援を受けにくい位置に。
再び危機に陥ったクロップであったが、
「「ファイアーボール!」」
そのクロップを掩護するかのように、魔法職の二人が火球を放つ。それが着弾するかと思われたその時、
「何っ!?」
「何だと!?」
突如として宙に現れた石の盾が、ファイアーボールを受け止めた。いや、そればかりか盾だったものは瞬時に石弾へと変じ、無数のストーンバレットが一行に降り注いだではないか。
「――撤退! 撤退するっ!!」
暫定リーダーを務めているギルド差し回しの男が叫び、一行は素早く階段の方へと退く。
そんな彼らを猛追していたスケルトンであったが、階段の中程……ちょうど岩質が変わる辺りを過ぎたところで、
「カカッ!」
なぜか苦しむ様子を見せたかと思うと力無く頽れ……やがてバラバラになった身体は、淡い光を残して消えた。
「……消え……た?」
「一体何だってんだ……」
「丁度階段の中間辺りだよな?」
「あぁ、岩壁の様子が変わった辺りだった」
一同顔を見合わせたが、こんな物騒な場所に――少なくともその近くに留まっているのは剣呑だと衆議一決し、とりあえず一階層まで引き上げた。
『……随分と芸達者だな、あのスケルトン』
『ほら、ベジン村の時にも活躍した、演技派のスケルトンですから』
『あぃつかぁ……演技もそうだが、殺陣の方も堂に入ったものだな。生前は冒険者か何かだったのか?』
『みたいですよ。本人も能く憶えてないそうですけど』
『あの○ケットパンチ! 凄かったですよね~? マスター』
『確かにな。あんな事ができるとは思ってもいなかったが……まぁ、それはそれとして、土魔法持ちの連中の働きも見事だった』
『正にドンピシャのタイミングでございましたな』
『凄かったですぅ』
『彼らも……驚いていた……ようでした』
『まぁのぉ……スケルトンがロケットパ○チやら土魔法だのを連発すれば、そりゃ驚かん方がおかしいわぃ』
『少しだけ人間たちに同情するわね……』
『最後のシーンも格好良かったですよね、主様』
『あの消えるのって、どうやったんですか? マスター』
『転移トラップの応用だな。発光はただの演出だ』
……などという、身も蓋も無い楽屋話を知りようも無いビーツたち。落ち着いたところで話を再開するが、気になるのは当然さっきの変事。あわやというところでスケルトンが消え去った件についてである。
「……やはり、岩の質が何か影響しているのか?」
「現状に鑑みると、そうとしか……」




