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第二百九十四章 「盗掘者のカタコンベ」~新作ダンジョン@マナステラ~ 11.骨のある奴(その1)

「……単純に考えりゃ、崩れ易くて放って置いたら危険だから……だよな?」

「そういう事になりそうだ。……気に入らん話だが、な」



 だがまぁ、冒険者ギルドに報告するネタは一つ手に入った……撤退を選ぶ口実も。


 強化の魔法が掛けられているとは言え、それは大昔の事の筈。効果は切れていると考えるのが妥当だろう。……ならば、下の階層は崩落危険地という事だ。探索にも慎重な態度が求められる。

 その証拠に……ほら、階段出口の少し脇に、崩落の痕跡が見えるではないか。



「ビーツ! 屍体(おろく)が埋まってる!」



 その崩落箇所を調べに行ったクロップが、崩れて積もった土砂の下に埋まる白骨を見つけたのは、その()ぐ後の事であった。

 慎重に土砂を取り除いた後に現れたのは、剣を握ったまま事切れている白骨死体で……



「どうやら俺たちと同じ冒険者みてぇだな」

「カードがありゃ()(もと)も判るんだが……」

「持ってねぇか」



 ――ギルドカードを持っていない〝冒険者〟がいない訳ではない。


 何らかの理由でギルドの資格を剥奪された者や、束縛を嫌って登録していない者もいる。冒険者と似たような仕事を請け負う傭兵(ようへい)もいれば、一部の領主などはギルドの口出しを嫌って、敢えて未登録の冒険者をお抱えにしている者もいる。更には、登録する前の駆け出しが、身の程知らずにここへやって来て……という可能性だって無くはない。


 革鎧(レザーアーマー)はいい加減朽ちているし、小物はどこかへ消え去っている。或いは誰かに持ち去られたか。

 一行の脳裏には、正体不明の〝剣と腕輪の落とし主〟の事が浮かんだが、両者どちらの()(もと)についても、探り出す手懸かりになりそうなものは残っていない。

 ちゃんとした埋葬は帰りにでも行なうとして、とりあえず今は先へ進もう。


 ……と、奥へと歩み去った一行の背後で、物言わぬ白骨……の筈だったもの(・・)()(じろ)ぎしたかと思うと、音も無くユラリと立ち上がった。


 熟練の冒険者としての勘に()ってか、一行が辛くも身を(かわ)した後を、凄まじい剣風が通り過ぎた。

 突撃を(かわ)したせいで位置取りが入れ替わり、襲撃者は一行が奥へ進むのを阻むかのように()(はだ)かる形となる。



「スケルトンか!」

「そんな気配は無かったってのに……」

「気を付けろ! かなりの手練(てだ)れだ!」



 一行が素早く散開して陣形を作るのを気にも留めず、スケルトンは迅雷の踏み込みで中央突破を図る……かのように見せて、一転して端にいたクロップに襲いかかる。(もと)より斥候職のクロップは、こういった打ち合い斬り合いは不得手としている。離脱して遊撃し易い位置にいたのが裏目に出た形だ。

 斥候ならではの俊敏さでどうにか斬撃を(かわ)しているところへ、



「クロップ!」



 隣に位置していたビーツが救援に駆け着ける。剣を振り被った白骨の腕を、(ひじ)の辺りで両断……する筈だったビーツの剣は、何も無い(・・・・)空間を(むな)しく通り過ぎた。



「なっ!?」



 肘関節から離れたまま宙に浮かんでいた腕。その腕が握る剣の切っ先が、そのままビーツの喉元に伸びて行く。

 すんでのところで()()って突きを(かわ)したビーツだが、スウェーバックした態勢が(あだ)となって、足許(あしもと)への注意が(おろそ)かになる。

 その隙を衝いて(しゃが)み込んだスケルトンが片足を伸ばし、()()ったため重心が後ろに移動して不安定になっているビーツの足許を()(はら)わんとする。中国拳法で云うところの「前掃腿」の形である。


 踏鞴(たたら)を踏んで体勢を崩したビーツに、何時(いつ)の間にやら右腕を再装着したスケルトンが、剣を振り被って襲いかか……ろうとするのを、決死の覚悟で踏み込んだクロップが体当たりで弾き飛ばした。

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良いね!捨て身で仲間助ける、非常に良いね!
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