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第二百九十三章 災厄ゴールドラッシュ 15.ホラを吹く者、踊る者~シャノアからの報告~(その2)

〝テオドラムを仮想敵としている国の情報がねぇ……〟

〝イラストリァはぁ、問題無ぃとしてぇ〟

〝モルヴァニア国内の情報は、アバンの「廃村」にやって来る行商人たちから聴取できますけど……〟

〝問題はマーカスかぁ……〟

〝あそこの拠点って「岩窟」だもんね。情報の流れからは外れてるよね〟



 そう、マーカス国内の状況についての情報が、微妙に不足しがちなのであった。

 勿論、クロウが懇意にしているノンヒュームたちからも随時情報は流れてくるのであるが、それでも〝(かゆ)いところに手が届く〟という状態にはほど遠いのである。



 これでマーカスがイラストリアと疎遠なら、まだ等閑(とうかん)()する事もできたかもしれないが、何を思ったか当のマーカスが、このところイラストリアに接近する動きを見せている。まぁ、それに関しては、〝イラストリアの〟ノンヒュームたちがここ(しばら)くの間に急激に存在感を増したという事情もあるのだが。……要するに、これもクロウのせいである。

 ともあれ、そういう事になると、 



〝やっぱり、マーカス国内にもう一つくらい、諜報拠点が欲しいよね〟

〝これ以上ダンジョンは造らんぞ〟



 言葉少なに鰾膠(にべ)も無く、しかも断固とした口調で拒否するクロウ。まぁそうだろうな――と、眷属たちも思う。


 何しろ配下としての目から見ても、クロウのダンジョン保有数は異常である。それも、クロウが意図して造り上げたとか配下にしたとかいうのならまだしも、()(くず)しに造らざるを得なかった、或いはダンジョン化せざるを得なかったダンジョンが少なくない。もはやダンジョンに魅入(みい)られているとしか言いようが無い。

 ここ(しばら)くはマナステラに開設予定のダンジョンにかかりっきりだったというのに、つい先日にもテオドラムとアムルファンの国境付近で、ダンジョンシード(幼体)保護のための新ダンジョンを造ったばかりなのだ。しかもその上、サウランドに付近にも監視拠点を造る計画が進んでいる。これ以上のダンジョンなど不要であるというクロウの訴えを、退ける事などできようか。


 そうなると、落とし所は……



〝またカイトさんたちに動いてもらうか……他は……〟

〝精霊門――という事になりますか〟

〝むぅ……確かに精霊門は必要か……〟



 維持管理の上に冒険者(えもの)の誘致まで考えねばならないダンジョンとは違い、精霊門は開く手間も小さい――註.クロウ視点――上に、維持管理は精霊たちに任せる事ができる。クロウの負担はぐっと小さい。それに小さな精霊門であれば、マーカス国内に複数を設置したところで、クロウの負担は高が知れている。

 その一方で、小さな精霊門であれば――ダンジョンに較べて――場所を選ばず開設できるため、諜報拠点としての使い勝手は(むし)ろ良い。



〝ふむ……マーカス国内の精霊門は、現状では「(いざな)いの湖」くらいしか無いしな。確かに精霊たちも不便かもしれんな〟



 ……(そもそも)の話、ダンジョンマスターが精霊の福祉に心を砕く必要など無いのであるが、そんな事を気にしないのが、クロウのクロウたる所以(ゆえん)である。

 ともあれそんな訳次第で、マーカス国内における精霊門の増設方針が決められた。


 ――これに発奮したのが、マーカスに住まう精霊たちである。

 

 〝クロウの期待に応えて見せねば精霊の名折れ!〟――とばかりに、マーカス国内の精霊たちが(こぞ)って――恐ろしい事に誇大表示ではない――精霊門・兼・諜報拠点の適地を探して国内を飛び廻る事になった。


 そして――そんな精霊の一体が、思いがけず金鉱の噂を拾って来る事になったのである。


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