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第二百九十三章 災厄ゴールドラッシュ 1.商業ギルド(その1)

本章も長丁場になります。

 それだけ聞けば何という事もない無害な話に思えたものが、他の話と結び付いた途端に不穏な色合いを帯びてくる事がある。


 王都イラストリアで開催された、モルファン王女の歓迎パーティ。その席上で()(ろう)されたシャルド古代遺跡からの出土品。これがその好例であった。



「シャルドの新たな発掘品の事は聞いているか?」

「イラストリアのパーティでお披露目(ひろめ)されたという、アレだな?」

「うむ。少し前からシャルドの警備が厳しくなったとは聞いていたが……よもや、あんな代物が発掘されていたとはな」



 ここまではまぁ世間話の範囲であったのだが……〝警備が厳しくなった〟という何でもない筈の言い回しが、ひょんな方向へ飛び火した事から、話はおかしな方向に転がり出す。



「警備が厳しいと言えば……近頃になって、マーカスの動きがおかしくなってないか? 妙に用心深くなったと言うか」

「む?」

「あぁ……言われてみれば、妙に警戒を強めているような……」

「……何かあったというのか?」

「愚問だな。何も無いのに警戒心だけを強める輩はおるまい」

「うぅむ……しかし、マーカスか……」

「妙と言えば妙な暗合(あんごう)だな」



 一昨年の夏も終わろうかという頃、テオドラムがとある事情から、商業ギルドに〝ダンジョン内で産出する金鉱石の品位〟について問い合わせた事があった。そこから誤解と妄想が迷走した挙げ句に商業ギルドが思い付いたのが、マーカスが金鉱石を得たのをテオドラムがリークしているという、噴飯ものの可能性であった。

 それ以来、商業ギルドの側でもそれとなくマーカスの挙動に注意を払ってはいたのだが、取り立てておかしな動きは見られなかった事から、最近ではその注意もお座なりなものとなりがちであった。


 ……そんなところへ、最近になってマーカスが妙にピリピリしているとの話が湧いて出て来た訳である。商業ギルドの面々が姿勢を正すのも当然であった。



「マーカスが態度を――大っぴらにではないにせよ――改めたのはいつ頃だ?」

「さて……(しか)とは言えんが今年に入ってから……そう、四月の終わり頃であったかな」



 ……普通ならここで話が終わったのだろうが、この時は少し事情が違っていた。

 マーカスの件が話題になる直前に、「五月」と「金」のキーワードが絡むネタが出されていたのである。

 そう……〝五月〟に入ってイラストリアを訪れたモルファン王女の歓迎パーティでお披露目(ひろめ)された、シャルドの〝黄金〟造りの財宝である。

 おまけにそれが出土したのはシャルドの〝古代〟遺跡というではないか。



「……確か『災厄の岩窟』からは、〝古代の〟金貨も出土していたな……」

「ミドの国の金貨だと言われそうな、アレか?」

「物好きどもが飛び付きそうなネタだからな」



 正しくは、古代の金貨に(なぞら)えてエメンが作った(まが)いものなのだが、そんな裏事情を商業ギルドが知っている筈も無い。なので(おもて)沙汰(ざた)になっている部分だけを取り上げてみたのだが、それでも……



「〝古代〟の〝黄金〟というキーワードは共通している訳か……」

「冗談のような暗合……いや、(むし)ろこじつけや言い掛かりに近い気がするが……」



 そして更に、この疑いを補強する別の〝暗合〟もあった。

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