表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1576/1814

第二百八十二章 歓迎パーティの夜 10.深夜の女子会(その1)

 女三人寄れば(かしま)しいと云うが、この時は四人の女性が集まっていたにも(かか)わらず、騒然とした集まりにはならなかった。まぁ、そのうち一人が残る三人の雇用側で、しかも王女というのでは無理からぬ事だろう。

 それはさて()き、王女は他の三人のために、歓迎パーティの様子を報告する。別段興味本位という訳ではなく、今後の事を睨んだ上での情報共有が目的である。

 乾杯の古酒・食器・折り鶴と、報告するネタは数々あれど、特に興味を惹いたのは、やはり(とう)()を飾った「遺跡の秘宝(しゅつどひん)」の件であった。



「パーティの席上で秘宝の存在を明らかにしたのは、何か意図があっての事かしら?」

「隠し(おお)すのは無理と踏んで、最も効果的な形でお披露目(おひろめ)を果たしたのでは?」



 王女が持ち出した疑問点に、まず答を返したのはミランダであった。



「確かカールシン卿も、去年の後半から警備が厳しくなったと(おっしゃ)っていましたし」

「わたしたちの留学を口実に使ったっていう、あれね」



 以前にも少し触れたが――シャルドの警備が厳しくなったのは、古代遺跡で(ぶつ)()ものの出土品が発掘されたためである。発掘現場の警備のみを強化すると、余計な詮索を招く(おそれ)があるというので、シャルド全域の警備を強化した訳だ。その口実に王女来訪が使われたというのは、既にカールシン卿が看破していたところであったが、今回イラストリアはその真相(の一端)を明かしたという事になる。


 ……(もっと)も、真に隠さねばならない機密――人族(ヒューマン)とノンヒュームが共存していた事を示唆する出土品――については、依然として厳重な秘匿が決め込まれている。今回の情報開示は、どちらかと言えばその機密から目を()らさせるために、比較的無難な出土品を公開したという裏事情があった。


 そういった裏事情の存在に目を(つぶ)れば、ミランダ嬢の解釈は充分に納得のいくものであった。


 が――モルファンの官僚たちから〝年の割に(したた)か〟と評されるアナスタシア王女の真意は、もう少し別のところにあった。



「時期的な事について云えばそうでしょうね。だけど、それを態々(わざわざ)歓迎パーティの席上で、(おおやけ)にした理由は何かしら?」



 王女の素朴な問いかけに、女子三人は互いに顔を見合わせた。



「単純に都合が好かったから――というのではいけませんか?」



 物事何でも単純に考えた方が良いというオッカム的人生観に()ったものか、リッカが最も明快な解釈を返す。それに対する王女の答は、



「いけなくはないし、充分にあり得る話だと思うわよ? ただ……それだけと安易に決めてかかるのも(まず)くない?」



 ……そう言われてみれば、確かに性急に結論に飛び付くのは下策やもしれぬ。

 確かに、リッカの言うのが最もありそうな解釈ではあるが、それ以外の解釈についても一考しておくのが賢明だろう。



「と、いたしますと……イラストリアは明確な意図を持って、秘宝の件をパーティの席上で(おおやけ)にした、という事になりますが?」



 その〝明確な意図〟とは何なのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ