表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1573/1815

第二百八十二章 歓迎パーティの夜 7.パーティ会場~遺跡の秘宝~

 第一陣として古酒での乾杯、第二陣として料理が漏られている器……と、立て続けに爆弾のようなネタを振られて疲れはしたが、その後は料理に飲酒に歓談にと、ごく()(きた)りの展開に推移した。このまま穏便に終わるかと思われたパーティであったが……どっこいイラストリア王家は、そんな()(ぬる)い幕切れはお好みでなかったらしい。パーティも終わりに向かった頃になって、会場の(かみ)()に現れたのは、イラストリア王立講学院の学院長、エイブラム・マーベリック卿であった。



「ご歓談中のところ無粋な割り込みをして申し訳ありませんが、ここで皆様にお目に掛けたいものがございまして……」



 気を持たせるような前置きの後で、マーベリック卿が会場の(そで)に合図を送ると、何やら五つほどの大荷物が運び込まれて来た。

 御目見得(おめみえ)の品自体はそれほど大きくないようだが、それらが(いず)れも馬鹿でかい台の真ん中にちんまりと鎮座しているのは、不心得者が手に取ったりしないようにとの配慮であろうか。……だとしたら、随分と貴重な品のように思えるが?


 好奇心一杯の参加者を尻目に、粛々(しゅくしゅく)とそれらは運び込まれ、五つがほぼ等間隔になるように配置される。参加者たちが上品に優雅に、しかし好奇心を一杯に(たぎ)らせて、手近にある台の周りに向かう。それを見ていたマーベリック卿は頃や良しと判断したのか、



()(よい)お目にかけますのは、シャルドの古代遺跡で発掘された財宝の一部であります」



 ――マーベリック卿がそう言った途端に、全員の視線が〝遺跡の財宝〟に突き刺さった。


 この時供覧されたのは、実は精巧な複製品(レプリカ)であったのだが、複製品(レプリカ)とは言え本物と同じように金銀宝石で(こしら)えられているため、本物さながらの警戒ぶりとなった次第である。何しろ破損や紛失の際は、王国から学園に賠償の請求が行くというのだ。万一の事などあって(たま)るものか。


 ……が、そんな裏事情を知らない参加者たちは、わらわらと手近の「展示台」の方へと急いで行く。……まぁ、本物であろうがレプリカであろうが、興味を掻き立てられる代物には違いない。しかも本日初公開だというのだから、これは群がり集まるのも道理である。


 そしてその中には、モルファン王女アナスタシア姫の姿もあった。



「……殿下はこの手の宝飾品には、あまり関心をお持ちでないと思っておりましたが」



 国にいる頃の王女の所業――一言で云えばお転婆――を知っているツィオルコフ卿とカールシン卿は、少しばかり意外の念に打たれたかのように問いかける。美術工芸品の鑑賞よりも、木に登ったり棒切れを振り回したり、或いは父親(こくおう)の酒のつまみを盗み食いする方に熱心だったではないか。


 が――そんな二人に返された王女の台詞(せりふ)は、その二人をして〝あぁ、成る程〟と得心せしめるものであった。



「何言ってるの!? 遺跡の秘宝よ? 財宝よ? 気にならない訳が無いじゃない!」



 つまり……その芸術性よりも何よりも、〝古代遺跡の秘宝〟という来歴――或いは胸熱ワード――こそが王女の(きん)(せん)に触れたらしい。


 その様子を見て、〝あぁやっぱり〟〝それでこそ我らの王女殿下〟……などという微妙な安心感に裏打ちされた、生温かい視線を向けてくるツィオルコフ卿とカールシン卿。


 そんな視線にムッとしつつも、知っていればどんなにゴネてでも、発掘現場の見学に駆け着けたのに。なぜ探り出せなかったのか……と、怨みがましい視線を返すアナスタシア王女。王女の視線に籠められた(だん)(がい)にカールシン卿はタジタジとなるが、



(けど……どうせこの後にはバンクスに行くのよね。あそこには発掘の当事者だったパートリッジ卿という貴族もいるそうだし……)



 これはこれで好都合ではないか――と、王女は一旦非難の手を(ゆる)める事にする。カールシン卿はホッとしたようだが……その一方でパートリッジ卿の方はと言えば、王女の襲撃を受けるフラグが立ったのであった。


 そして……



(そうよね……どうせなら海賊の秘宝(ふなばみじま)とか、埋もれた城の秘宝(ロトクリフ)とか……他にも色々とありそうなのよね。城にいる間は調べられなかったけど……この国にいる間に、少し調べておこうかしら……)



 ――と、クロウにとっても迷惑なフラグが立ちつつあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なに、この、ロマンを介する王女様(笑) いや、気持ちはわかるが……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ