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第二百八十一章 義賊参上!~プレリュード~ 1.本番前の打ち合わせ(その1)【地図あり】

 ヤルタ教の意図をまるっと誤解したままのクロウたちは、ドジソン一行から巻き上げた(そこそこ)大量の安酒を、テオドラムの村に振る舞う事を決めた。



『思うにヤルタ教のやつらは、酒の振る舞いを五月祭に合わせて行なうつもりだろう』

『あー……時期的に見ても、その可能性が高いですね』

『だったら、こっちはそれより一足先に配ってやって、あいつらを二番煎じに引き摺り落としてやろうじゃないか』

『おぉ、そりゃ面白ぇ』

『やつらの鼻を明かしてやろうじゃありませんか』



 ――さてそうなると、差し当たって次に解決すべき問題は、どこにその酒を(ばら)()くかである。



『別の言い方をすればだな、「シェイカー」がこの酒を振る舞っても不自然でない村はどこなのか――という事になる』

『お待ち下さい閣下(マイ・ロード)、「義賊」の正体が「シェイカー」だと明らかにするのですか?』

『いや、別に大っぴらに名告(なの)る必要は無いが、少なくともヤルタ教の連中は気付くんじゃないか? ……と言うかだな、気付いてくれんと面白くないだろうが』



 自分たちから奪った酒を、善人面(ぜんにんづら)して寒村に振る舞う。その行動に()(ぎし)りしてくれないと、嫌がらせになどならないではないか。



『元々自分たちのもんだと主張……あぁ、そうすっとヤルタ教の護衛が、盗賊()(ぜい)を相手に一敗(いっぱい)()(まみ)れた事も明るみに出る訳か』

『ヤルタ教も頭を抱えるでしょうね……』

『相変わらず悪辣な事を考え付くのぉ』

『そこまでやってこその、嫌がらせですよね! マスター』



 各人のスタンスはどうあれ、一応クロウの考えは、満場の容認を得たようだ。(もっと)も、



『あれ? そうすると、シュレクのダンジョン村は、無しですか?』



 ――という質問も飛び出たが、



『遠路遙々(はるばる)「シェイカー」が、シュレクのダンジョン村にまで足を伸ばしたなんて事が明るみに出たら、余計な気を回すやつも出るかもしれんだろうが』

『シェイカーの……アジトは……ダンジョンの跡地と……いう事に……なって……いましたが……?』

『……それってさぁ、余計に(まず)くない?』

『「ダンジョン」って共通するキーワードが出ちゃうとねぇ……』

『シェイカーとダンジョンの関係も、目立つ事になるよね』



 やはり今回は、シュレクの村にはご遠慮戴いた方が良さそうだ。フォローは別の機会にどうにかするとして、今は振る舞いの候補地である。



『そうすると……ヤルタ教の拠点があるか、もしくはそこに近い事が条件ですか』

『或いは、拠点との往来が盛んな村だな。それにもう一つの条件がある』

『もう一つ?』

『あぁ。「シェイカー」が狩り場にしている間道から、あまり遠いのは不自然だろうが』



 成る程、これも(もっと)もな道理である。だとすると、選定の範囲は更に絞られる。



『……狩り場の間道が街道に合流するところに、丁度ベーレンって村がありますぜ』

恰好(かっこう)の立地というやつだな』

『確か……ヤルタ教の……教会も……あった筈……です』

『文字どおりの〝お(あつら)え向き〟ってやつじゃねぇかよ』


挿絵(By みてみん)


 ――と、ベーレンの村が振る舞いの対象に選ばれ……そうになったのであるが、ここで待ったをかけたのがクリスマスシティーであった。



『宜しいでしょうか提督(アドミラル)

『ん? クリスマスシティーか。何かあるのか?』

『はい。話を蒸し返すようで申し訳ありませんが、正体を現すかどうかについて、(いささ)か思うところがあるのですが』

『……続けろ』



 基本的にクロウは、眷属(けんぞく)たちの意見には耳を傾ける事にしている。()して動議の提案者は、近代戦術にも明るいクリスマスシティー――元は米海軍の防空巡洋艦――である。聴かない訳にはいかないではないか。

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