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第二百七十九章 ダンジョン乱麻譚~第二幕~ 3.バレン冒険者ギルド~〝サウランド・ダンジョン(仮称)〟~(その2)

 何とも()(たい)の知れない頼り無い話であるが、闇の中に唯一見えた灯りである。手を伸ばさない理由は無い。それに、この話を契機にしてマナステラの冒険者ギルドと交流を持てるのなら、この町で(くすぶ)って――と言うか、もはや生き腐れて――いる冒険者たちに、稼ぎの場を提供できるかもしれない。更に、テオドラムやマナステラのダンジョンの情報を秘匿独占できるのなら、それはここバレンのセールスポイントとなるではないか。

 テオドラムにしてみれば、本命は飽くまでマナステラであり、バレンは付け合わせのような位置づけであったのだが……当のバレンにとってみれば、これは干天(かんてん)慈雨(じう)にも等しい。話に飛び付くのも道理であった。


 ともあれ、そんなこんなの経緯(いきさつ)から、バレンの冒険者はテオドラムおよびマナステラに足を伸ばす事が増えていた。とは言え、テオドラムではダンジョンアタックの機会はほぼ無い――「怨毒の廃坑」は危険に過ぎ、「災厄の岩窟」は民間人の侵入が禁じられている――ため、ダンジョン素材で稼ぐ事はできない。勢い、彼らが(もっぱ)らに(おもむ)く先はマナステラという事になっていた。


 だが――マナステラは仮にも隣国。ここバレンからは遠く離れている。もっと手近なところにダンジョンがあるのなら、そこに食指を動かしたくなるのは理の当然ではないか。



「……だとしてもだ、サウランドのダンジョンはサウランドのギルドが対応するだろう。俺たち鼻摘(はなつま)み者のバレンにゃ、それこそ(はな)も引っ掛けちゃくれねぇだろうよ」

「えぇ、サウランドはそうでしょう。しかしテオドラムはどうか」

「……どういうこった?」



 片眉を上げたギルドマスターからの問いかけに、古参の男は淡々と答える。



「サウランドに未知のダンジョンがあるとすれば、国境を接するテオドラムとしても無関心ではいられないでしょう。()してテオドラム(あそこ)では、少し前にグレゴーラムの駐留兵がモンスターに襲われている」

「……それが、この未知のダンジョンの仕業だってのか?」

「真偽の程はどうあれ、この情報にはテオドラムも興味を持つ筈。しかし、テオドラムがサウランドの冒険者ギルドに伝手(つて)を持っているとは聞いていません。(ひるがえ)って我がバレン冒険者ギルドは、テオドラムとの間に一応のコネを持っている」



 職員からの指摘を受けて、ギルドマスターも考え込んだ。

 イラストリアにとってテオドラムは、()わば仮想敵国の扱いである。そんなテオドラムの冒険者ギルドにサウランドの情報を教えてやるのは、国に対する背信行為になるであろうか。



(……いや……冒険者ギルドは国とは独立――ってのがギルドの建前(たてまえ)だ。()してサウランドの未知のダンジョン情報ってなぁ、別に国家機密でも何でもねぇ。……(とが)めを受ける筋は無ぇな)



「それに、マナステラだってこの情報には食指を動かすでしょう」



 ――という駄目押しの台詞を聞かされて、ギルドマスターの(はら)も決まった。



「ふぅむ……少しばかり探ってみても、別に悪かぁねぇか」

「えぇ、悪くはありませんとも」

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