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第二百七十九章 ダンジョン乱麻譚~第二幕~ 1.サウランド冒険者ギルド~〝サウランド・ダンジョン(仮称)〟~

「国境の森にダンジョンがある? どっからそんな与太(よた)が飛び出して来たんです?」

「どこからかと言うなら、我がイラストリアの国王府からだな。あり得る一つの可能性として通達してきた。……このネタでテオドラムを揺さぶるという悪巧みも一緒にな」



 しれっとした顔でとんでもない話をもたらしたサウランド冒険者ギルドのギルドマスターを、サブマスターの男は恨めしげに(にら)み付ける。が――時既に遅く、「国家の機密案件」は()(はや)彼の耳に伝えられた後である。今更〝聞かなかった事〟にはできそうもない。



「……つまり、この与太(よた)(ばなし)は根も葉も無いでっち上げなんですか?」

「それがそういう訳でもなさそうだから、国王府もこうして俺たちのところに話を持ち込んでる訳だ」



 そう前置きしてギルドマスターが()(ろう)した「サウランド・ダンジョン仮説」は、確かに一考に値する懸案事項ではあった……それだけ聞けば。



「しかしその、ご大層な仮説とやらは、〝テオドラムの兵隊がモンスターに襲われて壊滅した〟という前提に立って組み上げられたものでしょう? つまりその前提が怪しくなると、仮説の信憑性は一気に消え去る」

「そうだが……何か言いたい事でもあんのか?」

「えぇ、幾つか――ね」



 そう言ってサブマスターは、(くだん)の仮説に対する疑問点と反論を開陳(かいちん)する。



「まず……事件の当日霧が出たというのは、兵隊たちの証言があるだけです。ですが、その少し後にも濃霧がグレゴーラムを覆ったのは、これは村人たちの証言もありますから、異変当時に濃霧が発生したというのもあり得なくはありません」

「……続けろ」

「霧に続いてモンスターの襲撃があったというのも、これも一応は()としてみます。その理由として王国側が指摘している〝縄張りの防衛反応〟というのも、まぁ筋の通った言い分でしょう」



 そこまで話を認めるのなら、仮説を容認するのも同じではないか――と、言いたげなギルドマスターであったが、サブマスターの話はそこからが少し違っていた。



「さて――視界も定かでない霧の中でモンスターの攻撃を受けた兵隊は、その時にどう反応したでしょうか?」

「どうって……そりゃお(めえ)……」

「えぇ。(とっ)()に剣を抜いて応戦したでしょう。……隊伍を組んだ密集陣形の中で――ね」



 一寸先も解らぬ〝白い闇(きり)〟の中で、滅法界(めっぽうかい)(ひと)()(ぼう)(ちょう)を振り回せば……そりゃ周りに被害が出ない筈が無い。()して、兵士たちは隊伍を組んで行進していたのである。



「そうして、今度は同士討ちによって傷付けられた兵隊は、どういう反応を示すでしょうか。周りは相変わらず白い闇に覆われています」

「……敵襲を疑うだろうな。同士討ちじゃなく」

「後は事態が拡大するだけです。それに加えて、本物のモンスターの攻撃も混ざったかもしれません」

「………………」

「霧が晴れた後で屍体の傷を見れば、加害の主は一目瞭然でしょう。なのでグレゴーラムの司令部も、事実を明らかにする訳にはいかなかった。事態は〝モンスターによる襲撃〟で収められた訳です」

「………………」

「これが真実モンスターによる襲撃であれば、北街道の整備に軍を投入しないなどという事はあり得ない筈。なのに投入していないという事実が、テオドラム上層部の認識を示しています」



 ……事実とはかなりの(かい)()があるのだが、生憎(あいにく)な事にサブマスターの説には、相応以上の説得力があった。



「まぁ、イラストリアだってこのくらいの事は承知の上でしょう。その上であぁいった仮説を流して――」

「……テオドラムを揺さぶろうって訳か。イラストリア(ウ チ)のトップもえげつねぇな」


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