第四十二章 アクセサリー騒動 ~第一幕~ 2.原石の探索
原石の供給に目処が立ちます。
半ば思いつきのような俺の提案で、前回原石を採取した谷川の上流を探ってみた。露出した原石、あるいはその破片が谷川に転がり込んだ以上、原石が転がっている場所がある筈だ。この手の原石は岩の中にあると相場が決まっているから、原石が母岩から転がり出た場所、すなわち崖崩れとかそんな痕跡が残ってないかと考えたのだ。正直なところ、上手くいくかどうかは怪しいと思っていたんだが、土魔法持ちのスレイとウィンがいてくれたお蔭で首尾よく見つける事ができた。
『意外に見つかるもんだな……』
『泥だらけだから、言われるまで気がつきませんね』
『これなんか、普通に石と見分けがつかないしな……』
どうやら、風化した岩の奥に鉱脈みたいなのがあるらしく、脆くなった母岩が崩れる時に、より硬い原石が母岩の中から転がり出るようだ。俺の世界では、紫水晶なんかは岩を爆破して中から掘り出すとか聞いたような気がするんだが、少なくともこっちの世界ではこういう形で産出する事もあるんだろう。
この日の大きな収穫は、水晶以外の原石も採れた事だろう。スレイとウィンの能力が高いせいか、瑪瑙と翡翠の原石を見つける事ができたのだ。
『いえ、ご主人様、比較的硬い反応を示す石を選んで調べているだけですので、それほど難しくはないのでございますよ』
『慣れればうちの子供たちでもできると思います』
拾った原石は片っ端から携帯用ダンジョンゲートに突っ込んでいく。作ってよかった、ダンジョンゲート。
・・・・・・・・
『一応原産地を特定するのはできたし、原石の入手の目処も立ったわけだが、念のために谷川の下流側も調べてみたいな』
『……谷川が流れ込む先は地下の洞窟でしたけど、あの中に入るんですか?』
『いや、村の近くを流れている川があったろ? そこの河原で見つからないかと思ってな。上手くすれば村人たちも拾えるだろ?』
と、いう事で探してみたんだが、一応そこでも原石は採れた。数は多くなかったけどね。探せば他にも採取できるポイントは見つかりそうだ。
『ますあぁ、ダンジョン化、しますぅ?』
『……いや、そこまでするのはやめておこう。俺たちの洞窟も近くにあるし、ダンジョンの存在を気づかれる方が拙い。まぁ、ダンジョンマスターの端くれとして、地下の水路には興味が湧かないでもないけどな』
『しかし……この辺りで水晶だの瑪瑙だの翡翠だのが産出するって、噂とかにならなかったのかね』
『まだまだこの辺りでは農地の方が大事じゃからのう。そこまで気は廻らなんだろうよ』
『でも……行商人が……興味を……持ちました』
そーなんだよなー。下手をするとこの村の産業にも影響するし、騒ぎが大きくなって領主にでも目を付けられたら面倒だ。ここの洞窟が日本に通じている以上、俺たちがこの村を捨てるという選択肢はあり得ない、これは結構難しい対応を強いられることになるな……。
『今更知らんぷりは無理ですしねぇ』
丸玉の存在を公にする前提で、落としどころを考える必要があるな……。
明日も本章の続きです。




