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第二百七十八章 リーロット発諸方面行き迷走便 10.ニル~冒険者ギルド~(その1)

「中央街道? ……あの話がまた蒸し返されたんですか?」

「〝蒸し返された〟と言うか……少し話がややこしいんだがな」



 リーロットへの出稼ぎ人派遣の拠点として、時ならぬ特需に見舞われているニルの町。そこの冒険者ギルドでは、ギルドマスターと職員が内緒話の真っ最中であった。


 その彼らの話に出て来る〝蒸し返された中央街道の話〟というのは要するに、(かつ)(かん)()(どり)()いていたニルの町を活性化させようと、冒険者ギルドからテオドラム王国へ献じられた町興(まちおこ)し策の一つであり、その手始めに王都からニルに至る中央街道の安全性を確認するというものであった。

 調査自体は(つつが)()く実施され、ダンジョンやドラゴンのような危険物は存在していない事が明らかとなった。そこまでは重畳(ちょうじょう)の運びであったのだが……



「……肝心の街道整備の方は、金が無いという理由で無期延期になったじゃありませんか。それを、今頃になって何でまた?」

「一言で()やぁ発端はリーロットだな。それに北街道の整備が絡んでる」



 〝口外するんじゃねぇぞ〟――と言ってギルドマスターが教えてくれたその事情とは、(はた)で聞いていれば脱力しそうな話であった。

 リーロットの工事が切っ掛けとなって国民が出稼ぎに走り、そのせいでテオドラム上層部の不始末話が広まりだした。これにボーデ村の不満分子が合流した結果、北部の世情が(はなは)だ好ましくない状況になったため、不満の受け皿として公共工事をでっち上げた。その結果……



「……それまで閑古鳥が大合唱していた、このニルの重要性が一気に高まった。そうなると……」

「あぁ。北街道の結節点となるニル、そこに王都から延びる中央街道が未整備というのは、色々と具合が宜しくないんだと」



 下馬評のとおりマルクトからニルを経てグレゴーラムに至る街道が整備されるとしたら、それは軍事的にも重要な意味を持つ。なのに、中央からその街道に延びる街道が未整備のままでは、北街道の軍事的価値は半減する。



「ま、中央街道の整備自体は先の話だとしてもだ」

「……まだ何かあるんですか?」

「北街道……と言うか、ぶっちゃけグレゴーラム近辺の安全保障だな」



 そう言ってギルドマスターは、またしても口外禁止を前置きした上で、(ぶつ)()と頭痛を(かも)しそうな裏話を――気のせいか(たの)しげに――聞かせてくれた。そのせいで職員の胃はキリキリと痛みを訴え始めたが。



「テオドラムとしちゃ、どうせなら北街道をグレゴーラムまで延ばしたいってのが本音だ。しかし、その肝心要のグレゴーラムの傍に、神出鬼没のスタンピードが居座ってるってなると、こりゃ心穏やかじゃいられねぇだろうが」

「〝スタンピードが居座る〟というのは文法的にも……いえ、いいです。話を続けて下さい」

「あぁ。生き残った兵隊の証言――どこまで信じていいのか怪しいもんだが――に()るとだな、襲って来たモンスターってなぁ『ピット』のそれに似てたって話だ」

「……ここで『ピット』が出て来るんですか……」



 何やらオールスター揃い踏みの(さま)を呈してきた。この分ではこの後にも、何が登場するのか知れたものではない。



生憎(あいにく)、登場すんのは『ピット』だけだ。――で、『ピット』のモンスターがグレゴーラムを襲ったってなると、どうやってもイラストリアの南街道と国境を越えてやって来たって話になる。……(わし)としちゃぁ無理筋だと思うんだがな」

「自分もそれには同意します」

「あんがとよ。……まぁ、そのモンスターどもがこのニルの鼻先を(かす)めてグレゴーラムを襲ったたぁ、テオドラムの上層部も考えちゃいねぇようだ。けどよ――」

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