表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1544/1814

第二百七十八章 リーロット発諸方面行き迷走便 9.リーロット【地図あり】(その2)

挿絵(By みてみん)


 ――マルクトの手前からやって来た者の話――


「さて……(そもそも)だ、そんな工事がされんのか?」

「眉唾だってのかぃ?」

「マルクトからニルまでの間は――大昔はどうか知らんが――(わし)曾爺(ひいじい)さまの代からこっち、モンスターが現れたって話は聞かねぇ。お上が街道を整備するってのも、ま、納得できる話だわな。けどなぁ……グレゴーラムにモンスターが出たってなぁ、そのお上が言ってる事なんだろう? ヤバいと判ってる場所の近くに、街道なんか整備すんのか?」

「……つまり?」

「本当にヤバいんなら工事なんかされねぇだろうし、工事がされるってんならヤバかぁねぇって事なんだろうよ」



 ――ニルを拠点とする冒険者の話――


「大体だな、北街道の整備に兵隊を使わねぇってのが()に落ちねぇだろうが」

「しかし、そのお蔭で冒険者にも護衛の依頼があるんじゃないのか?」

「ま、そりゃそうなんだが……大体、軍の連中は、冒険者(オレたち)を使い捨ての駒みてぇに見てる節があるからな」

「ほぅ……何か焦臭(きなくさ)い話でも?」

「だから……さっきも言ったように、工事に兵隊を使わねぇって話だ。ありゃ、ヤバい場所に兵隊を投入して損耗すんのを嫌ってんじゃねぇのか? だとすりゃだ、街道工事の現場ってなぁつまり、兵隊が損耗するほどヤバい場所って事になるだろうがよ」

「成る程、理屈だな」

「だろう?」

「つまり……軍の参加が無い場所の工事には……?」

「あぁ、参加しねぇ方が無難だろうな」



 ――護衛仕事にやって来たレンヴィルの冒険者の話――


「あぁ……中央街道の話か? 確かに、北街道をグレゴーラムまで延ばすより、中央街道を整備するのが先だ――って話はあるな。けどなぁ……」

「あ? 何か問題でもあんのかよ?」

「いや……俺も詳しくは知らんのだが……中央街道で何かあったらしいって噂があってな。……ここだけの話だぞ? そんな噂を口にしてるだけで、国軍の連中にしょっ引かれるって話もあるんだ。……でな、何か知らんが、()(ごと)()いお偉方は、中央街道に手を入れるのに及び腰って話があってな」

「……で? その代わりに北街道を――って話になったってのか?」

「本当かどうかは知らんぞ? そういう話があるってだけだ」



 ――グレゴーラム西方の村から来た者の話――


「いや、国境の森にはウチの村からも、(たきぎ)や何かを取りに行くけどな。……あんたらの前で言うなぁ気が引けるんだが……ま、背に腹は代えられないってやつだ」

「あぁ、そっちの事情も薄々は聞いている。気にせず話を続けてくれ」

「んじゃ……お言葉に甘えて話を戻すとだな、境界のテオドラム(こっち)側にゃまともな木なんざ生えてやしねぇんだ。だもんで、モンスターなんざいる訳が無ぇ。いるとしたら、イラストリア(そっち)側の筈だ。……でな、そっち側でモンスターがめっかってねぇってんなら、こっち側に出て来る訳が無ぇやな。モンスターにだって居心地が悪いだろうからよ」

「つまり……北街道の工事をニルの東に延ばしても、モンスターが襲って来る(おそれ)は無い?」

「いや、そうとまでは言わねぇけどよ。少なくとも、国境の森にモンスターが常駐してるってなぁ、ちと無理筋じゃねぇのか?」



・・・・・・・・



「……思った以上に住民の意見が錯綜(さくそう)してるな」

「ったく……聞かされた話たぁ大違いじゃねぇかよ。どうすんだ?」

「どうもこうも、俺たちは出稼ぎの連中から話を訊き出して、それを報告するまでが仕事だ。そこから先で頭を痛めるのは、お偉いさんたちの仕事だろ?」

「ま――そりゃそうか。だったら……?」

「あぁ。とっとと報告してズラかるぞ。通信機の具合も好くないようだしな(笑)」

「……おぉ、そのとおりだよな。いつ壊れるか判んねぇんだ。急いで報告だけしなくちゃな♪」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ