表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1536/1815

第二百七十八章 リーロット発諸方面行き迷走便 1.イラストリア王城 国王執務室(その1

クロウ傘下の諜報部隊である「緑の(しるべ)」修道会が、思わぬ事態に巻き込まれ……そして関係各所を巻き込みます。

 時系列を少しばかり遡って……モルヴァニアからイラストリアに対して、「緑の(しるべ)」修道会への依頼を仲介してもらえないかという打診があった時の事である。

 例によって例の如く、イラストリア王城の国王執務室で非公式な会合が持たれていたのだが……この時はいつもの四人組に加えて、マルシング外務卿とルボワ内務卿の姿もあった。

 そんな余分の二人を横目で見ながら、ローバー将軍は口を開く。



「……まぁ、モルヴァニアの話を通すぐれぇなら構わんと思いますが……どっちの側にどの程度肩入れするんで?」



 依頼者たるモルヴァニアと、依頼の宛先である「緑の(しるべ)」修道会に加えて、修道会の(もっ)()の雇用主であるリーロット当局がこの件には関わっている。イラストリア王国としては、それらのどこに肩入れすべきなのか。



「それなのじゃがの……」

「大っぴらにはできんが、仮にも対テオドラムでの密約を結んでいる相手だからな。できればモルヴァニアに便宜を図ってやりたいが……」

「便宜を図るも何も、肝心(かんじん)(かなめ)の『緑の(しるべ)』修道会とやらに、何か伝手(つて)はあるんですかい?」



 そこまで軍では面倒見切れません――と、暗に突き放したローバー将軍を、宰相も外務卿も恨めしげな目で見つめるが、



「いや、(そもそも)軍は修道会なんかに関わりはありませんからな……ちょいとばかり()(さん)(くせ)ぇ連中だってのは認めるにしても」



 (むし)ろそういうのは、国内の治安維持を受け持つ内務部の所管ではないのか――と、暗に内務部トップのルボワ卿に話を振るが、



「監視だけならともかくも、こちらから接触するための口実が無い。不審の(かど)があるので拘引(こういん)する――などと言い出した日には……」

「あー……そりゃ、南部の連中が破裂しますな。盛大に」

「だろうが」



 ただでさえ独立(どくりつ)不羈(ふき)の気風が強い南部貴族だ。リーロットの整備の要ともなる修道会を、手前勝手な上に怪しげな理屈を付けて引っ立てたりしたら、勢揃いして噛み付いてくるのは間違い無い。

 テオドラムとの間が緊張状態にあり、それに関してモルヴァニアやマーカス、果てはマナステラとの間に密約が結ばれ、更には北の大国モルファンから王女が留学して来ようというこの時期に、国内の不和や(いさか)いなど起こしていられるか。依頼を持ち込んだモルヴァニアだって困惑するだろう。



「てぇ事は……単に話を通すぐれぇの事しかできねぇんじゃ?」

「それでは我が国の顔が立たん。ここはイラストリア王国としての誠意を見せる必要がある」

「そりゃ、小官にも重々(じゅうじゅう)解りますがね。けど、一体全体どうやって、その〝誠意〟ってのを見せようってお考えなんで?」

「うむ……」



 実際問題として、イラストリア王国が「緑の(しるべ)」修道会に対して影響力を行使するのは難しい。

 となると、せめてモルヴァニアに対しては、イラストリアがこの仲介依頼を軽く扱ってはいないというポーズだけ(・・)でも見せる必要がある。例えば、リーロットに派遣する使者として、(しか)るべき立場の者を送り込むとか。


 だが、これはこれで別の問題があった。



「どのみち修道会と南部貴族に対して、モルヴァニアの現状を説明する必要がある。となれば、外務の者が望ましいのじゃが……」

「無理ですな。モルファンの王女殿下ご来訪を控えて、外務は上から下まで(てん)手古(てこ)()いの有様です。この時期に王都を離れて南部に派遣できる〝(しか)るべき要職にある者〟など、一人もおりません(・・・・・・・・)



 宰相の要請を、外務を預かるマルシング卿が鰾膠(にべ)も無く切って捨てた。しかし宰相もそれは予期していたらしく、それ以上の拘泥(こうでい)は見せなかったが、



「……じゃが、(いず)れにせよ外務の者は必要じゃぞ?」

「……若手ながら力量は充分という者なら派遣できます。しかし、対外的な(かん)()となると……」

「そこは別の者に補ってもらう必要があるか……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ