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第二百七十六章 クロウ 3.「災厄の岩窟」

『……何だと? マーカスが「岩窟」内で金鉱脈を発見した?』



 ……それよりも重要性と緊急性の高い事案が(しゅっ)(たい)したためである。



『のぅクロウ、あのダンジョンには貴金属の鉱脈は無いとか言うておらなんだか?』

『その筈だったんだが……』



 (そもそも)「災厄の岩窟」を開設するに当たっては、事前に簡易的な地質調査を行なっている。その結果、当該地域には金を含むような母岩は無いと判っていたのだが……



『……漂砂鉱床とはな……盲点だった……』



 原地性の鉱脈は確かに無かったのだが、他所(よそ)から運ばれて来て堆積した異地性の漂砂鉱床については、完全に意識から抜け落ちていたのであった。

 考えてみれば「災厄の岩窟」の地下には、湖沼鉄や化石層のような太古の大湖沼の痕跡が残っているのだから、漂砂鉱床があっても不思議ではなかった訳だ。()してここは地球とは異なる〝剣と魔法の世界〟なのだから、これくらいのアクシデントは起きて(しか)るべきかもしれない。



『アクシデントの申し子のようなお主が言うと、説得力が違うのぉ』

(うるさ)いぞ、爺さま』



 ともあれ、金鉱床は現にそこにあるのだし、マーカスがそれを発見したのも揺るぎない事実である。今更文句を言ったところで始まらない。



『問題は……この発見が……どういう影響を……もたらすか……でしょう』

『確かにそこだな、問題は』



 (むし)ろダンジョンロードのクロウとしては、ダンジョン領域の拡大に貢献してくれている働き者のテオドラム兵に対して、何か褒美を与えて勤労のモチベーションを維持するべきか……などと、ダンジョンコアのケルと密談していたくらいなのだが、現実の方が一歩先んじた形である。

 まぁ、あまりテオドラムばかりを優遇(?)すると、マーカスとの格差が開くのではないか、それが表面化すると(まず)いのではないかとの意見も出され、どうしたものかと知恵を絞っていたところなので、それを考えると必ずしも悪い展開だとは言えない。


 ただ……ここで少し留意しておかねばならないのは、



『……テオドラムは以前から金鉱石を探していたよな?』

『採掘が目当てというより、サンプルの採集を目的としていた節がありますが……はい』

『つまり……テオドラムはダンジョン産の金に関心がある訳だ』



 クロウはテオドラムの事情など知らないし、()してや忖度(そんたく)する気など(ごう)も無いのであるが、



『このタイミングでマーカスが金鉱石を得たという事を、テオドラムが知った場合……』

『どういう反応をするか見当が付かんか……』



 クロウとケルの悪巧み主従は、揃って頭を抱える事になった。



『何だったら(わざ)とテオドラムに話を漏らしてやって、競争心を煽るという手も考えたんだが……』

『暴発の(おそれ)がある以上、その手を使うのはあまり……』

『うむ……』



 ――実際の問題は、クロウとケルが考えているよりも更に複雑である。


 クロウたちはテオドラムとマーカスの問題としてしか認識していないが、現実にはこれに商業ギルドの思惑(おもわく)までもが絡んでいる。三者三様に勝手な妄想を巡らせているのだから、この情報が表沙汰になった場合、どういう事になるのか予測が困難であった。



『この一件について情報をリークするのは問題外として……他の漂砂鉱床を探してテオドラムをそこへ誘導するというのも……』

『当面は()めておかれた方が(よろ)しいかと』

『うむ……』


これにて本章は終幕となります。次章はクロウサイドのやらかし回となります。乞うご期待(笑)。

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