第四十章 偽装とオーパーツ 2.オーパーツと捏造
廃墟の埋設が完了しました。本章はこれで終わりになります。
『次はオーパーツについてだ』
『こないだマスターが説明してくれたやつですよね?』
『そうだ、キーン、よく憶えていたな』
『で、そのオーパーツとやらをどうするんじゃ?』
『まぁ、趣味に走ったと言われても仕方がないんだが、「黒幕」が目を付ける程度の価値を廃墟に与える必要があるだろう? そのためにどうかと思ってな』
『いわゆる「古代超文明の遺産」ですか。年甲斐もなくわくわくいたしますな』
『……何を……仕込む……おつもり……ですか?』
『いや? 単に俺の世界のものを適当に持って来て残して置けばいいかなと考えているんだが?』
『残された……廃墟の……レベルに……似合わな過ぎる……ものは……拙いのでは……ありませんか?』
『むぅ。さすがに、石材建築の砦にねじ釘とかあったらおかしいか……』
『すると、ご主人様の世界の機械などは駄目ですな』
『そもそも、機械を残して置く理由が無いじゃろう』
『壊れていたとかではいけませんかな?』
『……機械類は一応止めておこう。下手に仕組みが解るものを残すと、後々面倒になる気がする』
余計なフラグは断じて立てないようにしないとな。
『じゃあ、やっぱり、ゴミですか?』
『主様、いつかみたいな古靴はどうですか?』
スニーカーか……。
『ふむ。ウィンの言うような古靴とか、あるいは合成樹脂製のゴミとか、こちらの世界にないだろうアルミ箔とかなら使えるか?』
『ろくでもない臭いがぷんぷんしておるが……妥当と言えば妥当かのぅ』
『でもぉ、ますたぁ、スライムならぁ、食べますよぉ?』
『ああ……スライムが入って来なかった理由が必要か……結界魔法みたいなものの痕跡が残っているようにするか……聖魔法の結界でいいか』
『ご主人様、それらをどこに配置するおつもりでございますか?』
『ん? 所詮ゴミなんだから、適当なところに纏めておけばいいだろ? 後で捨てるつもりだったが忘れた、って感じで』
『王国が……目の色を……変えて……虱潰しに……内部を……探すと……隠しダンジョンへの……通路が……見つかる……恐れが……あります』
あ、それがあったか……。念のため通路は閉じておくとして……
『ゴミは一層の隅に纏めておくか。深い階層は手を付けてない感じを強めに演出しておけばいいだろう』
『主様、作業員の足跡なんかはどうします?』
あああああっ、面倒臭ぇっっっ!
『あの、クロウ様、足跡ならアンデッドたちにつけさせれば……』
おおおおおっ、その手があったかっっっ♪
『それでいこう。レムス、お前が保管している冒険者と、ロムルス、お前のとこの勇者一行を適当に歩き回らせるぞ。石の床ならはっきりした足跡は残らんだろうから、ビブラムソールかどうかなんぞ判るまい』
『思った以上にやる事が多いですね……』
『人を騙すというのは大変じゃのう……』
・・・・・・・・
現場に残すオーパーツは、俺の古靴とカップ麺の容器、プラスチック包装、アルミの小皿と決まった。これらに「熟成」の錬金術をかけ、人為的に風化させてゆく。「熟成」では何年分加速するかが指定できるので便利だったが、さすがに六百年というのは手間だった。
廃墟全体に少し弱めの聖魔法で魔除けと結界を施しておく。隠しダンジョンへの通路は閉じておいた。足跡その他の小細工についても、最終的な打ち合わせ通りに仕込みをやっておく。後は廃墟全体に「熟成」の錬金術を六百年分掛けるだけだが、俺の魔力でもこれは大仕事だった。到底一日では終わらず、実に三日がかりで仕込みが終わった。その結果は上々で、聖魔法の痕跡といえるものがちゃんと残っていた。これならシナリオ通りの誤解が期待できるだろう。
廃墟を埋めた後の地層の処理は、ウィンとその子供たち、およびスレイ率いるクレヴァスのスレイターたちが頑張ってくれた。手前味噌だが、これなら考古学者も騙されてくれるだろう。
俺たちが全身全霊を込めて造り上げた廃墟は、そう遠くないであろう目覚めの時を待って、今は地中に眠っている。
もう一話投稿します。




