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第二百七十四章 ダンジョン乱麻譚~第一幕~ 4.再検証・グレゴーラム事変

「さて、そこじゃ」

「どこなんで?」

(ちゃ)()すでないわ。……如何(いか)にⅩが有能であるとしてもじゃ、グレゴーラムの盗伐計画を事前に察知し、間に合うようにモンスターを送り出し、しかもそれを全く気付かせない……などという離れ業が可能なものかの?」



 宰相の指摘に改めて考え込む二人。

 Ⅹならそれくらいの事はやりかねないと、先験的(ア・プリオリ)に決めつけていたが……感情的な(しがらみ)(とら)われず、虚心(きょしん)坦懐(たんかい)に難易度と成功率を検討してみると……



「ドラゴンやらワイバーンやらを出したり消したりしてるⅩの事だから……と、思い込んでいましたが……」

「ちょいとばかり難儀が過ぎるか」

(そもそも)、どうやって盗伐計画を察知したのか――というのが問題になりそうですし」



 ――〝察知して〟など、いない。

 ひょっとしてテオドラムならそれくらいの愚行暴挙はやらかすのではないかと(あや)ぶんで、事前にモンスターを派遣させていたら、懸念のとおりにテオドラム兵がやって来たと報告されて(むし)ろ驚いた……というのが事の真相である。


 だが、そんな裏事情までイラストリアに解る訳は無く、



「そうすると……ありゃⅩの仕込みじゃねえのか?」

「Ⅹの仕業かどうかは別にして、『ピット』の関与は怪しくなった……というところでしょうか」

「そこでもう一つの可能性が出て来る。サウランドに未知のダンジョンがあり、テオドラム兵を襲ったモンスターはそこに由来するというものじゃ」



 真顔でとんでもない事を言い出した宰相に、軍人二人の――(とが)めるような――視線が飛ぶ。余計な事を言い出すんじゃない。「言霊(ことだま)」というのを知らんのか。


 だが、そんな視線をものともせず、宰相は鉄面(てつめん)()然として淡々と話を続けていく。



「ダンジョン内にいる筈のモンスターがダンジョン外でテオドラム兵を襲ったのも――じゃ、自分たちの縄張りに侵入した者への敵対行動とするならば、『ピット』に原因を求めるよりも話は簡単になろう?」

「まぁそりゃ……」

遙々(はるばる)『ピット』のモンスターが、街道と国境を密かに越えて、テオドラムの兵士を襲った……というよりは、確かに話は簡単になりますが……」



 その代わり、〝未発見のダンジョン〟などという危険物を想定しなくてはならなくなる。しかも、実行犯が「ピット」でないとすると、Ⅹが関わっていない可能性も出て来るが……そうすると、〝未発見のダンジョン〟のモンスターが、襲撃後に鮮やかに姿を消して、今に至るも確認されていない理由が必要になる。もしくは、この〝未発見のダンジョン〟もまた(クロウ)の指揮下にあると考えるのか。


 どう転んでも(ろく)でもない話になりそうな気配に、軍人二人は顔を(しか)めたが、続く宰相の言葉を聞いて表情を改める事になる。



「ダンジョンのモンスターが集団で外に現れ、しかもその後に忽然(こつぜん)と消えた事例なら、既に報告されておる……他でもないマナステラで、の」

「「あ……」」

「ちなみに、この事に気付いたのはそこにおいでの陛下じゃがの」



 ここで軍人二人は礼儀正しく頭を下げ、国王の機知に敬意を表した。



「いや、単なる思い付きに過ぎぬのだがな」



 ここまで傍観者に徹していた国王であったが、満更(まんざら)でもない表情で口を開いた。だが、確かにこの指摘は重要であった。それというのも……

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