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第二百七十一章 アラドを巡って 4.クロウ(その2)

『あの……(ぬし)様、お土産(みやげ)を渡すのって、あの二人でなくちゃ駄目なんですか?』

『うん? どういう意味だウィン?』

『いえ……だから、あの二人の他にも商人が泊まっているんなら……』

『あ……』

『そいつらに渡してやる手がある訳か……』



 成る程。改めて考えてみれば、クロウたちに関わりがあるのはスキットルであって、レンドには――(いわ)んやその背後にいるマナステラに対しては、そこまで(しん)(しゃく)してやる事情は無い。手土産を渡す義理など無いではないか。


 今後もレンドとスキットルがアバンを訪れてくれるようなら、情報収集の面で助かるかもしれないのは事実だが、



『それなら現物を渡さなくても、興味を惹く情報だけ持ち帰らせれば充分か……』



 (むし)ろ現物が無い分だけ、アバン再訪のモチベーションが上がるかもしれぬ。


 そうすると問題は、何を(もっ)てマナステラの関心を惹くかという事になるが……



『マナステラが探してるのって、ノンヒュームの古美術品よね?』

『だが、そんなものはここには……いや? ……あるのか?』



 シャルドで拾ったアレは別としても、今のクロウの手には沈没船からのサルベージ品やら、海賊のお宝らしき埋蔵品やらが貯まっている。その中にはひょっとして、「ノンヒュームの古美術品」だってあるのかもしれぬ。

 そう思って、ハンスに確かめてみたところが……



『えーと……()ぐには思い出せませんが、幾つかそれらしいものもあったような……』

『数は多くないんだな?』

『少なくとも、()ぐにノンヒュームのものだと判るようなものは……はい、多くないです』



 ――だとすると、このオプションは現実的ではない。



『それにだ、今気が付いたんだが、もしもアバンでノンヒュームの古美術品がドロップするなんてマナステラに知られたら……何か(まず)い事になりそうな気がしないか?』

『あー……それは』

『しますね。ひしひしと』



 そうすると、ノンヒュームの古美術品以外でマナステラの気を惹くものを用意する必要があるのだが、



『……こいつらって、妙にアクセサリーの事を気にしてたよな?』

『あ、確かにそうですね』

『けど、自分たちで入手するのは色々と(まず)い……みたいな事も言ってませんでした?』

『う~ん……そう言われれば』

『気になってるのは確かみたいですけど……』



 眷属たちを困惑させた二人の会話であるが……その原因となったのは、何の気無しに発せられたスキットルの一言であった。

 ――すなわち〝アバンのアクセサリーは、ノンヒュームが好んで着るようなシンプルなドレスに合うのではないか?〟


 マナステラにとっての「アバンアクセサリー」の価値が急騰しそうな指摘であったが、それは飽くまで一つの思い付きであって、真偽が確認された訳でもない。また、アバンアクセサリーがノンヒューム好みのドレスに合うかどうか、これも確かめられた訳ではない。


 確かめるためにアバンアクセサリーの現物が欲しいところだが、生憎(あいにく)とそのアクセサリーは、どこぞの依頼者の意を受けたサガンの商業ギルドが一手に買い集めている。ここで購入の名告(なの)りを上げれば、サガンの商業ギルドに目を付けられるだけでなく、その背後にいる謎の依頼人に、〝マナステラがアバンアクセサリーに目を付けた〟という情報を与える事になる。それは(まず)い。少なくとも、自分たちが出先で判断していい案件ではない……


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