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第二百七十一章 アラドを巡って 3.クロウ(その1)【地図あり】

 アラドの町でレンドとスキットルがそこそこの戦果を挙げていた頃、アバンの「(あわい)の幻郷」では、またしても議論が再燃していた。

 クロウがガラス器を作るという事で、一旦は決着を見たドロップ品問題であったが、



『……ねぇクロウ、そのガラス器って、アラドの町で売れるもんなの?』



 ――というシャノアの素朴な疑問から、再び議論が巻き起こったのである。



『アラドの町はモルヴァニアにとって、ヴォルダヴァンとの窓口ともなる交通の要衝。重要なのは確かでございましょうが……』

『問題なのは購買力か』


挿絵(By みてみん)


 ヴォルダバン北西部の港湾都市カミス、そこからの街道がアバンを経てアラドに至っているから、舶来品の流通ルートに入っているのは間違い無い。ガラス器も――クロウがドロップさせるつもりの品とはかなり違うが――一応は海外からの輸入品であるから、このルートを通ってアラドに運ばれる可能性は無くはない。

 しかし、カミスからアラドに至る途中には、イルズ・カラニガン・サガンという商都が控えているのだ。それらをクリアーして、無事アラドに運ばれる舶載品は如何(いか)ほどか。また、(そもそも)アラドの町に、そういった品を求める需要があるのか。(むし)ろアラドを素通りして、モルヴァニアの王都辺りに持ち込んだ方が確かではないのか。


 こういった諸々(もろもろ)を考えると、



『アラドでの需給状況が判らん段階で、()(かつ)なものを放出するのは(まず)いか』

『少なくとも……あの二人が……戻って……来るまでは……結論を……控えた方が……無難かと……』

『けどクロウ、戻って来た二人から事情を訊き出して、それからドロップ品を作って渡すの? 間に合うの?』

『……さすがにちょっと厳しいな』



 情報入手をあの二人に任せている……と言うか、こっそり便乗している状況では、スケジュールは向こうの都合次第。(そもそも)それ以前に、あの二人が果たしてアバンに戻って来るのか、アラドからそのまま飛竜(ワイバーン)に乗ってマナステラへ帰還するのではないかとの懸念もあったのだが、



『いや、それは無いだろう。やつらの目的がアバンドロップの調査である以上、アバンを訪れる機会を無駄にするとは考えにくい』



 ――というクロウの指摘が一理あるものと判断されていた。

 とは言えアラド向けのドロップ品問題は、できるだけ早く解決しておきたいのも事実。あの二人の動きに任せておくのも如何(いかが)なものか。あの二人だけでは情報の量という点で少し(こころ)(もと)()いし、それは内容の偏りを生むのではないか?

 そういった懸念が(あげつら)われていたところで、



『あ、だったら俺らが調べてきましょうか?』



 ――と、名告(なの)りを上げたのがカイトである。

 「(あわい)の幻郷」はダンジョンであるから、クロウのダンジョンゲートを通ればアバンに出るのはほとんど一瞬。そこからアラドへは馬車で六日。()したる手間ではないと言うのだが、



『でもぉ、向こうでぇ、ぁの二人と出会ったらぁ』

『いや、俺らは直接の面識は無ぇしよ。大丈夫なんじゃね?』

『とは言え、万一顔を憶えられたりしたら、後々面倒な事になりはしませんかな?』

『う~ん……』



 結局のところは安全策を採って、二人がアバンへ戻って来たのを確認してから、入れ替わりで出発するという事になった。カイトたちの調査でアラドの情報は増えるだろうが、



『あの二人に何を渡すかっていう問題は』

『未解決のままという事よね』



 はてさて、これはどうしたものか――と、頭を悩ませていた一同であったが、

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