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第二百六十六章 アバン 15.宿主~ダンジョンマスター再び~(その3)

 アバンのドロップ品に関する議論はまだ続いていた。



『銀食器とかは出してないのよね?』

『おぅ。同じもんを数作るってなぁ面倒だからな』

『あぁ……確かに』

(ぬし)様のダンジョンマジックだと、どうなんですか?』

『複製は可能だな。材料さえあれば――だが』

『カトラリーのセットを出すの? (かさ)()らない?』

『ごちゃっと山にしてぇ、出すんですかぁ? ますたぁ』

『持ち運びが面倒そうですな』

『けどぉ、キチンとした箱に入れて、出すのもぉ』

『それはそれで面倒そうな……』

『……保留だな。少し考えてからにしよう』


『あ、ほら、ヴァザーリの洞窟で見つかったような、コインの(まが)いものは?』

『コインの(まが)いもの?』

『あ、「銭形(ゼニガタ)洞窟(ケイヴ)」の事だよね!?』

『エメンさんは知らなかったっけ』

『〝コインの(まが)いもの〟と言っても贋金の事じゃなくて、〝コインの形をした置物〟だったみたいなのよね』

『あぁ……そういう意味の〝(まが)いもの〟なんだ……』

『待て待て、下手をすると、「(あわい)の幻郷」と「コインの洞窟」が関連付けられるだろうが。余計な危険を冒す訳にはいかん』

『まぁ……クロウ(こやつ)の境遇に(かんが)みるに、()(かつ)な真似はせん方が良かろうな』


『だったらガラスのお皿は、クロウ? ほら、木の葉を封入したのがあったじゃない』

『皿? ……あぁ、葉脈を封入したコースターか』

『あ、南国のチョウを封入したのも、ありましたね』

『友人の海外土産なんだが……何でまたあぁいうのを寄越(よこ)したのか……』

『面白そうだからじゃないの?』

執筆(おしごと)の参考になると思ったのかもしれませんな』

『まぁともかく、ガラス器ならイラストリアにも売った事だし、大丈夫だろ』



 ……勿論、〝大丈夫〟などではない。


 モルファン特使の歓迎パーティ開催に際して、注文のあった食器類をイラストリアに売ったのも、その中にガラス器があったのも事実であるが……その〝ガラス器〟の内容に問題があった。


 こっちの世界で普及している――と言うほど普及してはいないのだが、ともあれ世間に流通している――ガラス器というのは、そこまで透明度は高くない。と言うか、くすんだような薄い色付きが基本である。

 ところが、二十一世紀日本人であるクロウにしてみれば、ガラスなど透明であってナンボである。なのでサルベージしたガラス器が透明でないのは、長く海中にあったために変色しているのだろうと考えた。そこでクロウは、持ち前のダンジョンマジックやら錬金術やらを駆使して、ガラス器の透明度を〝復旧〟(笑)させる事に成功し、それをそのままイラストリアに流したのである。

 なお余談ながら、沈没船からサルベージしたものをアバンの廃村でドロップさせるに際しても、やはりクロウのダンジョンマジックによって、海中にあった痕跡を消去している。


 それはともかく……幸か不幸かクロウの眷属たちは平素からクロウのマンションに入り浸っており、そこで二十一世紀日本のガラス器を目にしていたため、ガラス器というのはこんなものなんだろうとの――誤った――認識を植え付けられていた。これに関してはシャノアも例外ではない。

 他の眷属たちにしても事情は似たり寄ったりのもので、ガラス器などとは縁遠い者が揃っていたため、やはりクロウのガラス器の異常性に気付く事は無かった。そして……



『けどボス、あっしゃあガラスの器なんざ作れねぇですが?』

『あぁ、それは俺の方で何とかする』



 ――と、クロウが直々(じきじき)にタッチする事が決定し、「常識」とか「()(ちょう)」とかの介在する余地は益々(とお)退()く事になったのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] カラトリー一式に型番や紋章をつけて、個々に出現させてコンプガチャしないんですか? 大丈夫、この世界では禁じられていませんw
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