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第二百六十六章 アバン 14.宿主~ダンジョンマスター再び~(その2)

『要するに、サルベージ品でなさそうなものを、混ぜておけば、いいんだよね?』

『よし。魔石だな』



 打てば響くように出されたクロウの提案は、しかし一座の白けた視線で迎えられた。



『それ、絶対騒ぎになりますよ? (ぬし)様』

『クロウの魔石はねぇ……』

『魔石はマナステラの新ダンジョンに使うのではありませんでしたかな?』

『うむぅ……それがあったか』



 そうすると、サルベージ品との類似だけでなく、ダンジョンドロップとの類似にも注意する必要があるのだろうか?



『いえ……以前……ダンジョンマスターたちから……聴き取った……ところでは……そっちはあまり……気にする必要は……無いと……思いますが……』



 クロウ曰く「ダンジョンマスター友の会」(仮称)の証言に拠れば、一般的なダンジョンのドロップ品とは、(たお)した冒険者からの剥ぎ取り品が中心になっているようだ。現在の「アバンドロップ」とは懸け離れているため、疑われる危険性は低いだろう。

 それ自体は朗報であるとは言え、何をドロップさせるべきかの問題は、以前と比べて未だ一向に進んでいない。



『……これはあれだな。今までドロップさせたものを列挙してから、サルベージ品や海賊のお宝の中にあったもの、或いはこちらで用意できるものと比較して選んだ方が良いな』



 ――というクロウの動議が採択されて、候補となり得そうなものが幾つか挙げられた。その際、クロウが執筆の資料として持っていたアンティーク本が大活躍したのは、あまり他所(よそ)には漏らせないここだけの話である。


 その結果――飽くまで候補としてではあるが――出されたものは、



『祭具、(おう)(しゃく)、宝冠……(ぶつ)()(かも)しそうなラインナップじゃのぉ……』

『宝石箱に壁掛けか……意外とサルベージ品に無かったな』

『あれじゃないですか? 箱とかは木製だったんで腐っちゃったとか?』

『織物の……壁掛けも……同じでしょうし……』

『逆に言えば、それらをドロップさせれば、サルベージ品じゃないという傍証になる訳か』

『……あれ? (ぬし)様のお部屋に飾ってある〝壁掛け〟って、布じゃないですよね?』

『あぁ、あれは絵を焼き付けたタイルだな。所謂(いわゆる)デルフト・タイルの模造品だ。……そう言えば、()(ゆう)タイルは無かったな?』

『地球で……デルフト・タイルが……現れたのは……十七世紀からだと……さっきの……本に……書いてありました……』

『詳しいなハイファ……』

『お待ち下さいご主人様。絵と(おっしゃ)いましたが、ご主人様の絵柄だと気付かれては、やはり(まず)いのではありませんか?』

『何、それなら地球(こっち)で売ってる市販品から、絵だけ転写してやれば済む事だ』


『宝剣とか塑像とかは、既に流してあるんだよね?』

『宝剣と言っても短剣だけどね。宝石とか金の細工をあしらった。……まぁ、金と言っても純金じゃなかったみたいだけど』

『あと、塑像っつっても鋳物だぞ? ブロンズ像ってのか? さっきの本に載ってたみてぇな、綺麗な焼き物の人形なんざ作れねぇからな、俺には』

『あー……ビスクドールってやつ?』

『マイセンの陶人形とかも良さそうよね』

『詳しいなお前ら……』


『あ、そう言えば、お面とかも、ありませんでしたね』

『面? 能面のようなものか?』

『他にも、どっかの原住民が(かぶ)ってるような、大きなものとか』

『あぁいうのって大概木製だから、海の中で腐ったんじゃない?』

『他にも黄金製のマスクとか。エジプトとかインカとかの。あ、()(すい)でできたマスクってのも……』

『そんなもんが出せるか!!』



 アバンにおけるドロップ品の今後を巡る討議は、まだまだ紛糾していくのであった。


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