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第三十八章 王都イラストリア 2.国王執務室

いいタイミングで、王国がシャルドに興味を持ちました。

 ……このフレーズもすっかり定型化したが、早朝から執務室に集まっているのはいつもの四名。宰相がウォーレン卿に話しかける。



「して、ウォーレン卿、耳に心地よい報告を期待してよいのかな?」



 片眉を上げる事でそれに応えたウォーレン卿は、先日ローバー将軍との討議で言及した十件にドラゴンの巣の件を加えた十一件について解説。その上で、シャルド遺跡を第一の容疑者とした理由について説明した。



「シャルドか……。たしか発掘の折には中々に見事な遺物――財宝と言ってよいほどのもの――が見つかったように憶えておるが」

「はい。黄金作りの仮面や神像など、目も(くら)むばかりでございました」

「して、古代都市とやらの全貌は明らかになっておるのか?」

「いえ。あの折は……確か一部を発掘するに(とど)めたと記憶しておりますが」



 宰相はちらりとウォーレン卿を見やる。仔細はそちらが説明しろと言わんばかりに。あぁ、こういうところは将軍の又従兄(またいとこ)だな、と心中納得しながら、ウォーレン卿は説明を引き受ける。



「……あの遺跡はそもそも突発的に発見されたもので、事前調査の計画すら上がっていなかったそうです。急な事だったので、その年は簡単な試掘で終わる筈だったのですが、よりによってその試掘で大金星を掘り当てててしまい、翌年度の予算を前借りする形で調査を進めたそうです」

「ふむ? その後、調査が続かなんだのはなぜじゃ?」

「一つには、贋金(にせがね)作りのエメンのせいです。あの件で金貨の信用度がガタ落ちしたのと、金貨自体も大分草臥(くたび)れたものが多かった事もあって、古いものを新品に()直す事になりました。そのため、手持ちの金貨が一時的に減ってしまったので、予算局が渋ったというわけです」

「そう言えば憶えているな。あの時はろくに寝る間もとれなんだ……」



 遠い目をし始めた宰相を放っておいて、ウォーレン卿は話を進めていく。



「二つ目ですが、実はシャルドの遺跡を発見したのは当王国の者ではなく、隣国マナステラの貴族でした。立場的に微妙だったため、当人の方から調査団参加を辞退してきたのですが、実際の調査には非公式に参加していました。そこで、あの時調査を一旦打ち切って、後日に(くだん)の貴族を除いて仕切り直そうとして……」

「そのまま打ち切りっ放し、てわけか」

「はい」



 当時のドロドロした裏話を聞いた国王たちは眉を(ひそ)めていたが、気を取り直した国王が肝心な事を確かめる。



「……では、古代都市の全貌はいまだ判っておらぬのじゃな?」

御意(ぎょい)

「ふむ……未発見の場所になにやらⅩの関心を引くものが埋まっておる可能性があるわけじゃな」

「確信はありませんが、可能性は低くないものと」

「ならば確かめるまでよ。ローバー、済まぬが手空(てす)きの者を一個小隊ほど差し向けて、広い範囲で簡単な調査をしてみてくれぬか。古代都市の範囲や調査の方法などは宰相を通じて学者にでも聞いてくれ」

「……学院の方に(わし)が話を聞いてみましょう」



 面倒な仕事を押しつけられた宰相が、荒事(あらごと)一辺倒(いっぺんとう)又従弟(またいとこ)出張(でば)って疑念を持たれるよりはと、自分が出向く事を決める。


 ()くして、王国軍第一大隊によるシャルド遺跡調査部隊の編成が決定した。

もう一話投稿します。

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