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第二百六十六章 アバン 2.宿主~ダンジョンマスター (その1) 

『……何であいつがこんなとこにいるんだ?』



 モニターの画面に目を()りながら、当惑したように(つぶや)いているのはクロウである。そのモニターの画面には、廃屋内で会話しながら宿営の準備を進める二人の姿が映っていた。マナステラからやって来たレンドと……そしてスキットルの姿が。



『いつかの……イラストリア……コンビといい……』

『懐かしの(メン)()を引き寄せる成分でも、出てるんでしょうか? ここ』

『それもだけど……あの死霊術師(ネクロマンサー)って、随分あちこちに出没してるよね』

『神出鬼没ですぅ』



 ――確かにそのとおりである。

 冒険者と言えば根無し草の流れ者のようなイメージがあるが、現実には拠点を構えた場所を中心とした範囲で活動する者も多い。

 なのにこのスキットルときたら、シュレクのダンジョン村ブートキャンプを卒業してからというもの……



『……確か、エルギンに移動してたよね』

『その後はクリーヴァー公爵家の遺児(おぼっちゃん)の護衛として、ドランまでビールの視察に行きましたな』

『こないだは、何かイスラファンにも足を伸ばしてたみたいだし』

『その……合間々々に……シュレクの……ダンジョン村も……訪れて……います』

『そして今度はヴォルダバンか……』



 クロウたちが把握しているだけでも、テオドラム・イラストリア・イスラファン、そして今回のヴォルダバンと、実に四ヵ国を股に掛けている。実際にはこれにマナステラが加わる訳で、確かに一介の冒険者としては異例な程の行動範囲である。


 そんなスキットルがなぜ遙々(はるばる)アバンの廃村(こんなところ)にまでやって来たのかと、クロウ一味は興味津々で二人の会話に耳を傾けていたのだが……



『……スキットルと一緒にいる男、どうやらマナステラの関係者のようだな』

『テオドラム・イラストリア・イスラファンからヴォルダバンと来て、今度はマナステラが追加ですか……』

『あの死霊術師も、大概ですよね』

『行動的ですぅ』

『腰が軽いと云うのですかな』

『それもだが……何でマナステラが、こんなところまでしゃしゃり出てくるんだ?』



 困惑と好奇心から、更に会話に聴き耳を立てるクロウたち。その結果明らかになった事情は、



『マナステラがアバンのドロップ品を気にしているとはな……』

『ノンヒュームの手になるものではないかと疑っているようですな』

『あいつら、ノンヒューム製品には目が無いみたいだからな』



 マナステラの真意はノンヒューム工芸品のデータベースを作る事にあり、その際の遺漏を少なくしようとの観点から、アバンのアクセサリーがどのようなものかを確かめようとしていたのであり、必ずしもその入手を企図していた訳ではない。しかしその件は国家的な重要事項かつ機密事項であり、一介の冒険者に過ぎないスキットルは無論の事、レンドにすら詳しくは説明されていなかった。ふわっとした説明を受けただけである。

 それでなくても、どこで誰が聴き耳を立てているか判らない場所で、国家の重要事を軽々しく口にするような愚行を、この二人が冒す訳が無い。

 結果として、アバンの廃村こと「(あわい)の幻郷」の地上部で為された会話を傍受しているだけのクロウたちに、マナステラの真意を察する事などできよう筈が無い。ただ、マナステラがノンヒューム案件を気にするのはいつもの事なので、クロウたちも深く考えずに納得したのである。その結果として情報が、〝マナステラはアバンのアクセサリーを欲しがっている〟という風に微妙に変質したのは、或る意味で仕方の無い事であったろう。


 そして更に――



アバン(ここ)と……マナステラは……遠く……離れていますから……』

『噂話が妙に変質するのは防げないですか』

『実物を見る事も、マナステラにはできないですしね』



 キーンの発言それ自体は、深い企図無く発せられたものであっただろうが、それがきっかけとなって、話は別方向に進んで行く。



『何やらサガンの冒険者ギルドが、アバンのアクセサリーを集めているようですからな』

『あの連中、何でまたアクセサリーを集めているんだ?』



 そのせいでマナステラの上層部が余計な食指を動かしたのだとすれば、クロウにとってサガンの行動は、これはもう業腹(ごうはら)以外の何物でもない。



『さぁ……金になるとでも思ったのですかな?』

拙作「転生者は世間知らず」ですが、書籍版二巻発売を記念してSSを公開しています。宜しければこちらもご覧下さい。

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