第二百六十四章 噂の真相? 10.来訪者たち(その5)
後書きにお報せがあります。
しかし――問題となっている「アバンの廃村」は、
「……おかしな宝箱に入って出てはくるけど、その中身は所謂〝ダンジョンのドロップ品〟とは違っている……という事ですか?」
「あぁ。んな訳で、本当は〝ドロップ品〟って言い方も正しくはないんだが……他に適当な言い回しが無いんでな」
「はぁ……」
「確かに……」
名称問題はさて措いて、アバンドロップが通常のダンジョンドロップとは一線を画しているという事は、レンドとスキットルとしても聞き流してはおれなかった。
特に――〝ドロップ品の内容がコロコロ変わる〟などと聞かされては。
一体どういう事なのか?
「どうってなぁ……最初に出て来たなぁ黄金造りに小さな宝石をあしらった、値の張りそうな短剣だったらしいんだがな。その後は暫く陶磁器が続いて……」
――ここで古陶磁を専門とするレンドが身を乗り出したが、
「……その後に出て来たのが、何つーか……どうにも奇妙な代物だったらしくてな」
「奇妙とは……」
「どういう……?」
「だから――俺らにも能く判んねぇんだわ。ギルドのやつらが仕舞い込んじまっててな」
「「はぁ……」」
どうにも不得要領な話であったが、とりあえずそれらのドロップ品は、ノンヒュームとも古陶磁とも無関係らしい。なら、これ以上踏み込んで不審を買う必要も無いだろう。
「んで、それが終わった後に登場したのが――」
「アクセサリーですか?」
「いやまぁ……アクセサリーっちゃアクセサリーなんだが……今出て来てるやつたぁ、ちっとばかし毛色が違ってるって話でな」
「「ははぁ……?」」
ドロップ品の内容がこうも次々と変わると聞かされては、二人が訝しみの声を上げるのも無理はない。
それというのも……イラストリアからノンヒューム当てに陶磁器の発注が出された事で、手持ちの古陶磁を迂闊にドロップさせづらくなったクロウが――例によって深く考える事をせず――その場凌ぎの間に合わせに(日本の)百均で買ったものを放出していたのだが、これはこれで物議を醸しそうだと遅蒔きながら気付いて、沈没船から回収したアクセサリー類へと切り替えたのである。まぁ、合間々々に缶入りのドロップス――偶々居合わせた子供に与えた――やアルミニウム製の折り鶴などという、別方向にややこしいものを放出したりもしていたが。
ともあれ、手持ちのドロップ品候補が逼迫してきた事に危機感を抱いたクロウが、ハンスに命じて調達させたのが、今、一部で密かに話題となっている(笑)「アバンアクセサリー」なのであった。
要は泥縄の連続なのであるが、傍からはそうとばかりも見えていないようで……
「……話に聞くダンジョンのドロップ品とは、大分違っていますね」
「どっちかって言うと、半端に集めたものを処分しているような感じが……」
まぁ、ここまでなら強ち間違ってもいないし、
「……という事は、今後もまた内容が変わる可能性が――ある?」
「あ? そりゃまぁ、有るか無いかって言われりゃ……有るだろうな」
この遣り取りにも文句を付けるべき点は無い。ただ……
「そうすると……今後、ノンヒュームの古美術品がドロップする可能性も……?」
「まぁ……無いとは言えんわな」
……そこから上述のような結論が導き出されたのは、論理の展開的には撞着も問題も無かったとしても、幾つかの方面にとっては不幸な帰着であったと言えよう。
(「これは……アバンにもそれなりに目を配っておく必要ができたって事かな?」)
(「商人たちの間に伝手を作っておきますか?」)
唐突ですが、著者の他作品「転生者は世間知らず」の二巻が発売される運びとなりました。活動報告に書影を載せておりますが、発売日は十一月の二日という事です。……明日ですね。
今回はローレンセン滞在中の話を纏めてありますが、書籍版ヒロインであるマーシャの留守番事情も幕間として載っております。
宜しければ手に取ってご覧戴けると幸いです。




