第二百六十四章 噂の真相? 5.サガン商業ギルド(その2)
――と、意見が傾きかけたところで、
「だが……それにノンヒュームの『古美術品』がどう関わってくるのだ?」
「「「「「………………」」」」」
そう――不可解なのはその点である。
確かに、このところのノンヒュームの活動には目覚ましいものがあるが、そこに「古美術品」の出る幕は無い。
仮に、ノンヒューム自身が古美術品を求めていると考えてみても、これまでにそれらしき動きは認められていない。商売柄その手の動きに敏感な商業ギルドが察知していないのだから、実際にも動きは無いとみるべきだろう。
唯一接点があるとすれば……
「シャルドの遺跡……か?」
「確かに、あの遺跡にはノンヒュームの痕跡があるとの話だが……」
「美術品の類が出土したという噂は聞かんぞ?」
「イラストリアが厳重に秘匿しているのかも……」
――濡れ衣である。
「いや待て、シャルドの古美術品と言えば、もう一件あっただろう」
「あ……古代遺跡か」
「確かに……あっちからは結構な値打ちものが出たと評判になっていたな」
「……そう言えば……イラストリアは今頃になって、その古代遺跡の再発掘を進めているな……」
「うむ……」
「これも平仄と言えば平仄か」
――考え過ぎである。
「ふむ……イラストリアが何かノンヒュームにとって価値ある古美術品を入手し、ノンヒュームはそれを手に入れる対価として、イラストリアに技術的な協力を果たしている。……仮説としては考えられるか?」
「どうやってかそれを察知したマナステラが、自分たちも件の『古美術品』とやらを探そうと躍起になっている――か」
「……平仄としては合っているな」
――合ってなどいないと言うのに……
「しかし……だとしても、些か迂遠なように思うのは私だけか?」
「いや……それは確かに……」
「どちらかと言うとイラストリアは、ノンヒュームたちのやらかしに振り回されている観があるしな」
「うむ。それにノンヒュームたちの行動も、イラストリアに対する対価というよりも、寧ろテオドラムに対する嫌がらせに思える」
「確かに、そっちの方が首尾一貫した説明になるな」
巡り巡って辿り着いた結論は、〝やっぱり能く判らない〟というものであったようだ。一同が脱力感に襲われたのも無理はない。
「……結局、マナステラがノンヒュームの古美術品を集めている理由は判らず終いか」
「あの客人も単刀直入に要件だけ訊いて、それ以外の情報は漏らさなかったからな。推測しようにも材料が足らん」
「面倒な話はいい」
むっつりと言い放った声に、一同は益体も無いお喋りを止める。
「我々がアバンのアクセサリーを集めているのは、そういう依頼を受けたからだ。同じようにマナステラがノンヒュームの古美術品を集めても、文句を言う筋合いは無いだろう。……寧ろ我々サガンの商業ギルドとして、今後はどう動くかをはっきりさせるべきだ。――違うか?」
男の――やや現実的な――動議に、一同は頷いて同意を示す。
「ノンヒュームの古美術品なら今後も需要があるだろうし……我々としても目を配っておくか」




