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第二百六十四章 噂の真相? 3.サガンに降り立ちし者

「いいんですかね……一応は目立たないようにって言われてるのに、こんな派手に乗り付けたりして……」



 マナステラの王都マナダミアを飛竜(ワイバーン)()ってから十三日、マナステラ国務会議がサガンへ人員を派遣すると決めた日から数えたら二十一日を()たこの日――古美術全般に(わた)る知識を買われて確認役に選ばれた商家の元三男坊レンドルクと、死霊術(ネクロマンシー)よりも軍事的な作戦行動の才覚を買われて起用された(一応は)死霊術師(ネクロマンサー)のスキットルは、サガンの町に降り立った。


 時ならぬ飛竜(ワイバーン)に乗って、それはもう目立ちまくって。



「けど、飛竜(ワイバーン)を使うというのは(そもそも)、国の上層部からの指示な訳だしね。僕らがどうこう言えた筋合いじゃないさ」

「まぁ、それはそうなんですけど……」



 なおも釈然としない表情のスキットルに、レンドルクは自分の想像を述べる。



「目録化の作業は或る程度進んだみたいだからね、仮に他国に知られたところで不利益は少ない……そう考えたんじゃないかな」

「成る程……情報を秘匿し続けるより、敢えて漏らして圧力と牽制に使うという事ですか」



 そこはスキットルもネスの(もと)で、二十一世紀情報戦の基礎を学んだ者。少し水を向けてやるだけで、マナステラ上層部の判断を理解した。

 ――と同時に、その様子を見て取ったレンドルクの方は、内心で舌を巻いているのだが。


 〝面白い男だ〟――と、レンドルクは思う。


 以前はパッとしない三流の死霊術師(ネクロマンサー)だったらしいが、数年前に(しばら)くどこかへ雲隠れしたかと思うと、見違えるほどの成長を遂げて出戻って来た。


 依然として戦闘能力はそう高くないらしいが、敵味方の戦力判定が正確で、それに基づく進退の判断も的確。事前の危険回避と撤退については、見事と言うほか無い手際を見せるため、商隊の護衛として――就中(なかんずく)その指揮官として――若いながら高い評価を受けているという。彼よりもランクの高い冒険者たちも、スキットルの指揮下に収まる事に文句を言わないというのだから、仕事の堅実ぶりが察せられる。



(荒事は得意じゃないって言ってたけど……道中の警戒ぶりは堂に入ってたな。何でも死霊の気配を探る事で、警戒の一助としているらしいが……)



 一応は死霊術師(ネクロマンサー)名告(なの)っていながら、アンデッドの一体も使役していない事といい、その死霊術(ネクロマンシー)以上に警戒と護衛の能力が高く評価されている事といい、世間一般で云う死霊術師(ネクロマンサー)とは一線を画し、しかも有能な冒険者であるのは確かなようだ。


 ……にも(かか)わらず本人の自己評価は低く――仄聞(そくぶん)するところでは、彼の師匠というのが尋常ならざる優秀者であったためらしい――そのせいで外部からの評価が今一つ実感できていないようだが……そこはまぁご(あい)(きょう)というものであろう。



「で――この後はどうしますか? レンドルク様」

「レンドでいいよ。様付けも要らない。その方が人目に付かないだろうしね。秘匿の必要は薄れたと言っても、太鼓叩いて触れ廻る必要も無い訳だし」

「……成る程、解りました。で――?」

「うん。さっきの質問に答えると、まずはサガン(ここ)の商業ギルドへ行ってみようと思う」

「いきなり商業ギルドへ――ですか?」

「こういうのは変にコソコソ嗅ぎ廻るより、或る程度は開けっ広げにしておく方が上手くいくからね」



 実家を飛び出した三男坊とは言え、マナステラでもそれなりに名の知れた商会に生まれ育っただけあって、この手の交渉には慣れているようだ。



「この仕事を引き受けるに当たって、或る程度は現場での裁量を任されてるしね」



 ついでに、現場での裁量権をもぎ取ってくるくらいには有能らしい。……まぁ、それを()としたマナステラ首脳部も、それなり以上には有能であるようだが。



「まぁ、そういう事であれば。……自分は交渉事には(うと)いので、その辺りはレンドさんにお任せしますよ」



 納得した様子のスキットルと連れ立って、レンドルク改めレンドはサガンの商業ギルドへと向かった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  一般人には視認出来ない人魂とか浮遊霊でも使役してたりな。自分から手の内を明かしてやる必要なんか何処にもないんだから。
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