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第二百六十四章 噂の真相? 1.マナステラ~悩める国務卿たち~(その1)

 さて――地味ながらも重要な意義を持つ国家プロジェクトを他の国々に先駆けて、しかも秘密裡に開始したマナステラである。


 国務貴族たちが保有するノンヒューム古美術品のデータベース化は、挿絵の作製などに一部遅れは見られるものの、まずは順調に進んでいた。

 更なるデータベースの充足を図るため、或いはノンヒュームの古美術品に関する情報を得るために、秘密裡に商業ギルドに接触したところで……ギルドからもたらされた情報が、国務卿たちを大いに悩ませる事になった。



「サガンの商業ギルドがアバンのアクセサリーを買い集めている?」

「あぁ。それも〝大々的にであるが目立たないように〟――だそうだ」

「うむ……」



 どこぞの誰かからの依頼を受けて、商業ギルドがアクセサリーの入手を図る。

 それ自体には別に怪しむべき点は無い。()して、集めている対象とは〝アバンの(まよ)()から得られたドロップ品〟である。自分たちとは何の関係も無い筈だ。


 それでも彼らが気にせざるを得ないのは、〝アクセサリーを買い集めている〟というその一点にあった。


 自分たちがノンヒューム古美術品のデータベース化を進めている事もあって、サガンの商業ギルドが集めている〝アバンのアクセサリー〟というのも、実はノンヒュームの古美術品ではないか――という懸念を(ふっ)(しょく)できなかった訳だ。

 (さい)()の念を持って見れば、枯れススキも幽霊に見える道理。あるあると思って見れば、何かがそこにあるように見えるものである。



「考え過ぎなのかもしれんが……」

「だが、その懸念が当たっていた場合が怖いだろう」

「うむ、全く無視するという訳にもいくまい」



 そして、こういう議論の行き着く先は――



「……誰かをサガンに派遣して、事の次第を確かめさせるしかあるまい」

「それもできるだけ早いうちに――だな」



 ――というお約束になるのであった。



「しかし……人を派遣と言っても誰を()るのだ?」

「今は目録作りの真っ最中だからな。手の空いている者などおらんぞ?」



 事が事だけに、何の素養も無い者を派遣しても役には立たない。()りとて素養を持つ者は、既にデータベース関連の任務に就いている。ここから()(かつ)に人員を引き抜けば、肝心(かんじん)(かなめ)のデータベース化作業に遅れが出る。それは避けたい。


 ――と、一同が頭を悩ませているところへ、



「いや……それなのだがな、必ずしも専門家を派遣する必要は無いのではないか?」



 ……などと言い出した者がいたため、居合わせた者たちから疑惑の視線を浴びる事になる。



「どういう事だ?」

「何も判らぬ者を派遣したところで、何の役にも立つまいが?」



 〝何言ってんだこいつ〟……と、言わんばかりの白い目付きで見られたが、彼には彼なりの言い分があった。



「そこだ。サガンのギルドがノンヒューム古美術を集めているというのは、今はまだ我らの中での疑念でしかない。海のものとも山のものともつかぬ噂を確かめるのに、何も態々(わざわざ)専門家を派遣する必要はあるまい?」

「む……?」

「……な、成る程」

「言われてみれば……」

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