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第二百六十二章 マナステラ 1.会議は踊る

 さて――舞台は変わってマナステラである。


 このところノンヒュームの動きに良いところ無く引っ掻き回されてばかりのこの国であったが、別にこの国の首脳部が、他国と較べて特段劣っている訳ではない。単に騒動の中心にいるのがノンヒューム――更にその黒幕はクロウ――であり、マナステラ(このくに)はそのノンヒュームに忖度(そんたく)するところが大きいがために、受ける影響も大きい――と、ただそれだけの事である。

 そのマナステラが久々に――〝久々〟の部分が哀れを誘うが――積極的な動きを見せようとしていた。切っ掛けとなったのはパートリッジ卿からの情報である。


 既に述べたようにパートリッジ卿は、シャルドの古代遺跡から〝人とエルフの交流を示唆する出土品〟を多数発掘している。その情報を一月も半ばを過ぎた頃になって、しれっとマナステラに流したのである。それも念の入った事に〝出土した遺跡の立地条件を見るに、マナステラでも同じような遺跡が発見される可能性が無くもない〟――などという爆弾的な考察を添えて。

 更にその三日後、裏でパートリッジ卿からの()(そう)を受けたロイル卿が、今度は〝エルフの美術史を専攻する学者を探すべき〟――などという献策をしてのけた。


 パートリッジ卿からの情報を受けた段階では、エルフの古代遺跡発掘計画などを立てようと右往左往していたマナステラ首脳部であったが、ロイル卿の提言を受けて、少しばかり頭を冷やす事になった。



「確かに……今から今から慌てて調査計画など立てても、成果が出るのは何時(いつ)になるやら判らんな」

「まぁ、それでも立てぬ訳にはいかんだろうが……」

「今少し現実的な方向で考えてみる事も必要――か」

「うむ。発掘の計画は計画として、既に美術史を研究している者がいないかどうか、それを確かめるのも重要であろう」



 ――と、ここまではパートリッジ卿の予想した流れに沿っていたのだが……



「しかし――だ、そのような都合の好い者がはたしているか?」

「ふむ……王国に勤務している者の中におればいいが……そう上手くはゆくまいな」



 (かつ)てのクリーヴァー公爵粛清事件からこっち、マナステラ王国とノンヒュームたちとの間には隙間風が吹いており、マナステラ国王府の職から離れたノンヒュームも多かった。つまり――王国に勤務するノンヒュームの数は、以前に比べて減っている。その残留者の中に都合好く〝エルフの美術史を専攻する学者〟がいると考えるのは甘いだろう。



「……そういう者がいたとしても、既に野に下っている可能性は低くない。となると……」

「……それらの者は〝在野の研究者〟として、既にイラストリアの講師募集に応じている可能性が高い――か」

「それではマナステラ(わがくに)の功績とはならんな……」



 ――と、パートリッジ卿の思案に相違して、後ろ向きとなりかけた国務卿たちであったが……ここで一人が投げかけた提案が全てを引っ繰り返す事になる。



「……思ったんだが……必ずしも『研究者』を探す必要は無いのではないか?」

「何?」

「どういう事だ?」



 意表を()いた発言を聞かされて、困惑と興味を露わにする一同。この男は一体何を言いたいのだ?



「考えてもみよ。我らが今、()うして雁首を寄せ集めているのも、全ては我がマナステラの国威の発揚、それとノンヒュームに対する存在感の発露が目的であろう。逆に言えば、学術的な成果は必須ではない。我らの目的は飽くまでマナステラという国の存在感を高からしめる事、そこを履き違えてはなるまい」

「な、成る程……」

「言われてみれば……うむ、確かに」



 身も蓋も無い発言ではあるが、彼らマナステラ王国国務卿の立場に(かんが)みれば、筋の通った意見とも言える。

 さて……前振りはそれでいいとして、その後に続く本論はどういったものなのか。

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