第三十七章 シャルド 5.お宝
ちょっとしたアクシデントが起こります。
廃墟の建造に目処が立った時点で、最初にシャルドに泊まった時に設置したダンジョンをどうするかという事が問題になって、俺たちは久しぶりに町跡の地下に来ていた。
『マスター、ここ、どうするんですか?』
『あぁ、少し勿体ないが、廃墟を造った以上は余計なものを残しておきたくないしな。変に不審を持たれてもこまる。ここはダンジョン化を解除して、元通り埋めてしまうつもりだ』
『少し勿体ないですね』
『まぁな。潰す前に折角だから見回っておこうと思ったんだが……うん?……何か妙な反応があるな?』
『ますたぁ?』
『敵ですか?』
『いや?……そんなんじゃなくてな……廃屋の地下室、いや、保管庫か?』
とにかく現場に行けば判るだろうと、妙な反応の方へ赴いたんだが……
『マスター、何ですか? コレ』
そこにあったのはボロボロになった布袋に包まれた何か。上を見上げると……どうやら暫定ダンジョンを造った時に、廃屋の床下の保管庫みたいな場所をダンジョン内に取り込んでしまい、保管庫の底が抜けたようになって、中身がダンジョンの床に落ちたらしい。
『ともかく、中身を確認しよう……って、これ!』
『あ、ひょっとしてコレ、こないだから話題になってた……』
『出土品ですかぁ?』
『みたいだな。盗掘されて行方が判らなくなっていたらしいが……この上にある家の主が隠してたのか』
状況を確かめたいが、上はどうなっているんだ?
『ますたぁ、見てきますぅ』
ふむ、ライなら大丈夫か……。
『気をつけて行けよ、ライ。何かあったら、普通のスライムの振りをしろ』
他に適任もいないのでライに偵察を頼んだが、すぐに空き家だと伝えてきた。なので、俺たちも上に登って、保管庫の隠し扉らしいのを内側から開いた。あ、上に登るための足がかりは、ダンジョンマジックで壁を変形させて作った。
『普通に廃屋だな……』
『何の変哲もありませんね、マスター』
何かないかと廃屋内を探し回ってみたが、手掛かりになるようなものは何も見つけられなかった。
『隠した当人が何も伝えずに死んだか何かで、そのまま残されたんだろうな』
『盗賊は無実だったんですね』
『ますたぁ、これぇ、どうしますぅ?』
それなんだよな……。
・・・・・・・・
念のために他の廃屋の床下も見回ったが、それ以上のお宝は発見されなかった。その日はダンジョン解除を一旦見送って、洞窟に戻って善後策を協議する事にした。
『ほうほう、これが盗掘された古代の財宝のう……』
『クロウ様、シャルド遺跡の出土品と同質のものですか?』
『報告書でしか見てないからなぁ……確かとは言えんが、似た雰囲気はあるな』
『国に報告する気はないのじゃろう?』
『当然だ。猫糞云々よりも、発見した状況を説明しづらい。正直に答えるわけにはいかんのだからな』
『これを……どう……使い……ますか?』
『ハイファの言うとおり、使い道を考えた方が建設的だな。何か案はあるか?』
『案と言うても、王家の目を引く小道具にしか使えんじゃろう? 換金するわけにはいかんのじゃからして』
『盗掘品として……使い……ますか?……それとも……未知の……出土品……として……使い……ますか?』
『それだな……盗掘品の要目は判っていないようだし、未知の出土品として使うのがいいだろうな』
『どういう場面で使うおつもりでございますか?』
『今のところは思いつかんが……』
『主様、主様の魔石と一緒に置いておいたらどうでしょうか?』
ふむ……シャルドという場所と魔族を関連づけられるか……。
『いい考えだ、ウィン。その線で考えてみよう』
明日でこの章は終わりになります。




