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第二百五十六章 エッジ村発ファッション波紋 9.アバンドロップ~とばっちり~(その2)【地図あり】

「何……だと……? 報告が偽りであったというのか?」

「偽りではない。恣意的に報告を省略した部分があるだけだな」

「それはそれで大問題だろうが!」

「そのとおり。軍の大問題――だな?」



 内務卿にジト目で切り返されては、レンバッハ軍務卿も黙らざるを得ない。戻ったらその場で厳命を発して、クズ連中を――必要なら拷問や自白剤を用いてでも――吊し上げてやると心に誓っていた。



「まぁ……治安維持を預かる立場から言わせてもらえば、報告内容が事実かどうかは問題ではない」



 いきなりの問題発言に一同が(ざわ)めくが、内務卿の真意をきちんと理解している者もいた。



「問題は、その噂に対する国民の反応――だな?」

「そのとおりだ」



 問題点の所在を正確に言い当ててくれたラクスマン農務卿(りかいしゃ)に、メルカ内務卿は同意の言葉を返す。幾許(いくばく)かの感謝の念を添えて。



「つまり……こちらの打った手が裏目に出た訳か……」



 シュレクの鉱山では、単にそこがダンジョン化しただけでなく、坑道からドラゴンが出て来たり、挙げ句には巨大なスケルトンワイバーンの編隊が奴隷商人を拉致したりといった異常事態が続け様に起きた。

 国民の間に不安が広まるのを懸念した当局は、それらについては箝口令(かんこうれい)を出して、詳細な情報が広まるのを抑制したのである。


 ところが……アバンでのアクセサリー回収に邁進(まいしん)する商人が増えたせいで、それらの商人がテオドラムを訪れる頻度も上がるようになる。そして、人が動くところ情報も動くのである――噂話というかたちで。

 そんな噂話の中に、シュレクの村におけるテオドラム兵の暴虐と、それに敢然と立ち向かうスケルトンブレーブスの闘い……要するに吟遊詩人(バード)が盛んに広めている話が含まれていたのであった。

 〝人生万事が交喙(いすか)(はし)〟とは()く言ったもので、国民の動揺を懸念したテオドラム当局による情報規制の結果、シュレクに関する情報をまるで知らなかった国民は、商人が持ち込んだ噂話をまるっと信じてしまったのである。……テオドラム当局の思惑(おもわく)とは裏腹に。


挿絵(By みてみん)


「今のところ、噂話が広まっているのはウォルトラムの辺りだけだが……この状況が続くようでは……」

「うむ……」

「全国的に広まるのも時間の問題か……」

「噂話を規制する事はできんのか?」

「噂がごく一部に留まっている時ならできただろうが……今となっては……」



 (なまじ)噂が広まったこの時に、その噂話を規制したりすれば、(かえ)って噂の(しん)(ぴょう)(せい)を高める方向に働くだろう。



「手の打ちようは無いのか?」

「考えている手が無いでもないが……内務卿としての職掌を越える。そこで、この場に持ち出させてもらった訳だ」

「ふむ?」

「そこからは私が話そう」



 ――と、再び話を引き取ったのは、今の今まで脇に控えていたマンディーク商務卿であった。



「一つの試案としてだが……元凶となっている商人たちの入国制限を考えている。具体的には関税を上げる方向で」

「関税を上げる?」



 ――成る程。これは内務卿でも商務卿でも、単独で裁可できる範囲を超えている。外務卿との(せっ)(しょう)が必要であろう。


 外務卿は(いささ)か難色を示したものの、暫定的な処置という事で同意を貰う事ができた。

 その結果、テオドラムの関税が上がった事で、商人たちの足はテオドラムから(とお)退()く事になる――国務卿たちの思惑(おもわく)どおりに。



 そして――テオドラム入国を回避した商人たちの足は、アラドからモルヴァニアに向かう事になった。


 二月も終盤の事であった。

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[一言] 「一つの試案としてだが……元凶となっている商人たちの入国制限を考えている。具体的には関税を上げる方向で」 焼石に水疑惑 商人の反感買うしな 後元凶は噂を広めてる商人じゃなくて、 違法な手段…
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