表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1392/1812

第二百五十六章 エッジ村発ファッション波紋 7.アバンドロップ~蒐集者~

 エメンが苦心の果てに作り上げた、〝エッジ村風(エッジアン)とは一線を画しつつも、同じように貴金属の細工を前面に押し出したデザイン〟。

 これが――或る意味では必然的なのかもしれないが――エッジ村風(エッジアン)ドレスと(こと)(ほか)相性が良かったのである。

 それはつまり、エメンとハンスが生み出した「アバンのドロップ品」としてのアクセサリーに、大きな付加価値が付いたという事でもあった。


 ――そしてそのせいでアバンの廃村は、エッジ村風(エッジアン)ファッションを巡る多大な需要――と言うか、特需――に巻き込まれる羽目になった。

 予想外の事態にクロウ一派が当惑するのは勿論であるが……それ以外に、そしてそれ以上に、想定外の事態に当惑させられる者たちがいた。


 だが、結論を急ぐ前に、(くだん)の「アバンドロップ」が引き起こした事態を、時系列に沿って追ってみよう。



・・・・・・・・



 事の発端は全くの偶然であった。


 新たな年の一月も終わりとなった頃、アバンの廃村こと「(あわい)の幻郷」からドロップしたアクセサリーを偶々(たまたま)入手した貴族が、これが(いた)エッジ村風(エッジアン)ドレスとマッチする事に気付いたのである。

 ()(ぜん)興味を掻き立てられたこの貴族は、これを持ち込んだ宝石商にアクセサリーの出所を問い合わせ……そして、「アバンのドロップ品」であるとの回答を得る。


 その貴族は即座に宝石商と共謀してサガンの商業ギルドに、アバンでドロップするアクセサリーを――()(みつ)()に――集めてほしいとの依頼を出した。


 依頼を受けたサガンの商業ギルドは、モルヴァニアとイラストリアとの距離もあって、エッジ村風(エッジアン)ファッションが巻き起こした波紋についての詳細を把握していなかった。なので依頼の内容には当惑したが、その依頼を引き受ける事自体に逡巡(しゅんじゅん)は無かった。

 引っかかったのは依頼文にある〝()(みつ)()に〟という箇所である。



()(みつ)()にと言われても……商業ギルド(う ち)ではギルド員(しょうにん)に依頼を公布して、アクセサリーを集めてもらうしか無いんだが……」



 まさかギルドの職員がアバンに日参する訳にもいかないし、第一そんな真似をしたら、立ち所に商人たちの耳目を集めるに決まっている。〝()(みつ)()〟どころの話ではない。

 ならばじっくりと時間をかけて、目立たぬように集めるべきか?

 依頼主に問い合わせたところ、それでは(まず)い、至急欲しいという返答。どうしたものかと頭を抱えた結果、



「……とある依頼人(・・・・・・)――名は伏せる――が、アバンでドロップするアクセサリーの見本を欲しがっている。先方の希望であまり高い値を付ける事はできないが、商業ギルドはギルドのメンバーが協力してくれる事を切に願っている……こんなところか?」

「うむ。一言半句と(いえど)も嘘は含まれていない」

「〝とある依頼人(・・・・・・)〟の正体を含めて――な」



 どこぞの国家機関からの依頼と誤解する者も出るかもしれないが、ギルドはそこまで関知しない。


 〝あまり高い値を付ける事はできない〟と言った割には悪くない価格で買い取ったために、アバンでアクセサリーを入手した者は、それを商業ギルドに持ち込むようになった。何しろアバンを(もう)でる者は、商人だけに限らず多種多様。アクセサリーの処分に困る者も少なくなかった。商業ギルドで買い取ってくれるのなら願っても無い――と考える者も多かったのである。


 そしてその結果、アクセサリー目当てにアバンを訪れる者が増えるようになった。


 ――これが第二のトリガーであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ