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第二百五十一章 新年祭(四日目) 8.ヴィンシュタット~知育玩具~(その1)

第二百五十一章五話、「メチルアルコール」を「エチルアルコール」に訂正しました。

ご教示戴いた方々に、遅ればせながらこの場を借りてお礼とお詫びを申し上げます。

 ソレイマンからは興味深い報告を受けたが、本日クロウがここを訪れた理由は他にある。



「ハク、シュク、お年玉……と言っても解らんか。……新年の贈り物だ」



 去年と同じように、ポチ袋に入れられたお小遣いに目を輝かせる二人。どちらかと言うと中身より、色彩豊かなポチ袋の方を喜んでいるようだが。



「それとだな……今日は他にも持って来たものがある」



 ――というクロウの言葉に、ポチ袋の(とりこ)となっていた二人も(おもむろ)に顔を上げた。


 子供二人の顔が期待に輝いているのに対して、大人たちの顔に微妙な警戒の色が浮かんでいるのは……まぁ、過去のアレコレに(かんが)みれば、仕方のない事であったろう。


 が――そんな雰囲気をものともせずに、クロウが取り出して見せたのは……



・・・・・・・・



 ――読者諸氏は憶えておいでであろうか? クロウが「樫の木亭」のマルコ少年のお土産にと、「ニキーチンの積み木」を贈った事を。そしてその切っ掛けとなった、エッジ村における保育事情の事を。


 子供の知育という事についてぼんやりと考えていたクロウが、ハクとシュクの存在を思い出したのが、この一件の切っ掛けであった。

 マルコ少年よりも大人びているとは言え、子供時代の知育が重要な事に変わりは無い。となれば、ハクとシュクに対しても何らかの知育を考えるべきではないのか? 少なくとも、子供を預かる者として、それくらいの責任は果たすべきであろう。


 ……という具合に、二十一世紀日本人の価値観で判断したクロウが、二人に対するお年玉という形での供与を(もく)()んだのである。

 

 ――では、何を提供するべきであろうか。


 これが単なる玩具というなら、その選択肢は幾らでも考えられる。しかし、それに「知育」という名が付けば、選択の幅は一気に狭まる。


 エッジ村で好評を博した「ニキーチンの知育玩具」にしても、クロウが憶えているのはあの積み木だけ。他にもあったような気はするが、詳しい事は憶えていない。調べれば判るかもしれないが……しかしさすがにハクとシュクの年齢を考えると、今更積み木遊びは厳しいだろう。


 うむむと考えていたクロウであったが、そこで降って湧いたように記憶の表層に浮かび上がって来たフレーズがあった。(いわ)く――〝手は外部の脳である〟。

 つまりこれは、手先の器用さを育むような遊びが良いという事ではないのか?


 そのフレーズ本来の意図はどうあれ、そういう考えに至ったクロウが思い付いたのが塗り絵と……あろう事か折り紙であった。特に後者は、(かつ)てアバンの廃村で、ダールとクルシャンクに「折り鶴」を託した時の件が記憶に残っていたせいであろう。あの「折り鶴」は色々と(ぶつ)()(かも)した挙げ句、各方面に小さからぬ影響を及ぼしたのだが……そんなのはクロウの知った事ではない。

 あの時はうっかりアルミなどという素材を使ったために失敗したが、アルミでなければ大丈夫の筈だ……多分。



 ――勿論、大丈夫などではなかった。


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