表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1368/1812

第二百五十一章 新年祭(四日目) 6.マナステラ~ノンヒュームたちの事情~

今回は説明回です。

 さて――マナダミアでドワーフたちが話していた内容について、この場を借りて少しばかり補足しておこう。


 マナステラは近隣諸国の中では最大のノンヒューム人口を擁しており、そこに住まうノンヒュームたちにも、自分たちこそが最大多数、もしくは主流という自負がある。……いや、あった(・・・)


 ――その自負を根底から脅かしたのが、ここ(しばら)くのイラストリア王国、正確にはそこに住まう同胞の動きであった。


 (いず)れかの伝手(つて)によって、他所(よそ)では得られぬ様々な物品を得られた、もしくは、他所(よそ)では知り得ぬ知識を与えられた。


 ……これだけならさして問題では無かった。少しばかり悔しい想いはするが、言ってしまえばそれだけである。


 しかし――マナステラのノンヒュームたちを凹ませたのはそれではない。


 何処(いずこ)からか入手した上質の砂糖とビールを武器に、イラストリア在住の同胞たち(ノンヒューム)は自分たちだけで、怨敵・テオドラムに対する作戦行動を執り始めたのである。


 これが、ノンヒュームの勢力を糾合してテオドラムに真っ向から立ち向かう……というのであれば、自分たちマナステラのノンヒュームもそれに参戦したであろう。しかしながら、イラストリアのノンヒュームが目下テオドラムに対して仕掛けているのは経済戦。それも即決を狙うようなものではなく、ジワリジワリと嫌らしいくらいに、一歩一歩テオドラムを追い詰めている。


 ……自分たちにはどうにもできない領分である。一体誰から入れ知恵されたのか。


 それでも、せめて宣伝戦の一助なりともと考えて、マナステラのノンヒュームたちもテオドラムの悪評――最近のヒットはシュレクにおけるテオドラム兵の暴虐ぶりらしい――を積極的に流す程度の事はしている。

 なぜかこの件では人族(ヒューマン)の冒険者たちも協力的で、積極的に噂を広めてくれているが。何しろ冒険者というのは動いてナンボ。長距離を移動するのは当たり前で、国境を越えて移動する者も珍しくはない。そういった冒険者たちが、行った先で(こぞ)ってテオドラムの悪評を並べ立てるのであるから、噂の広まるのは早かった。

 ()てて加えて、この国にいるエルフたち――感激屋で詩作などに才を発揮する者も多い――の中には吟遊詩人(バード)伝手(つて)を持つ者もそこそこおり、彼らを通じてもテオドラムの悪行が広められていった。


 ――それだけには留まらなかった。


 考えてみれば当たり前の事ではあるが、ノンヒュームの職人たちは自分たちの製品がテオドラムに流れるのをよしとしないようになっていたのである。これはノンヒュームの職人――鍛冶師の他に錬金術師や(くす)()も多い――たちが申し合わせてと言うよりも、銘々がそういう行動を採り始めただけであったが……その結果は無視できぬ影響を及ぼすに至った。


 元々テオドラムでは、ノンヒュームの製品を購入するような者は多くなかったが、それはテオドラムがノンヒュームの影響からフリーである事を意味しない。


 テオドラムと取引のある商人に対しては、ノンヒュームたちが好い顔をしない――という風評が広まると、まず小規模の商人などが、テオドラムとの商取引に及び腰になり始めた。その結果、テオドラム向けの商流が少しずつ細くなっていったのである。


 この辺りの動きは、(かつ)てヴァザーリやバレンで見られたのと同じ経過をなぞっている。


 この一連の動きについては、既に連絡会議も確認しているが……要するに、巨大な農業生産力をバックにして貿易でその存在感を発揮していたテオドラムは、末端部からではあるが、その通商活動に支障を(きた)すようになり始めていたのである。


 ――シュレクを除いては。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ああ、ノンヒュームのトップってことになってる連絡会議はシュレクのダンジョンが精霊術師の手によるものの可能性が高いって思ってるから、唯一の港(陸の孤島?)みたいな扱いになってるのか。
[一言] 他国のノンヒュームと最低限の連携もしてないのか(困惑 毎回毎回人手不足だってやってるのにね。 祭りの際の売り子なり何なり機密じゃ無いことでも依頼できるでしょ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ