挿 話 マナステラ王城(その2)
そう言えば、元々はそんな話だったな――と、話の本筋を思い出す国務卿たち。
それが本当なら一大事である……多分。
「そうとは限らん。逆にノンヒュームがダンジョンを使役しているのかもしれんだろう。少なくとも活用法を見出したとか」
「しかし……そうすると現在のノンヒューム活躍は、ダンジョンの恩恵によるもの――という事になるぞ?」
――正解である。
「第一、砂糖はどうなるのだ? あれもダンジョンで採れたなどというつもりではあるまいな?」
――これも正解である。
「それだけではないぞ。古酒の事もある。まさかサルベージにもダンジョンが関わっている……などと言い出すのではないだろうな?」
――繰り返すが……正真正銘の正解である。
ただし、それを「正解」とするのは、さすがの国務卿たちにも荷が重かったようで――
「笑い話はそれくらいにして、もう少し現実的な話に移ろうではないか」
「そうだな」
――というところに落ち着いた。
ほぼ完全に事実を言い当てていながら、あまりにも〝現実的でない〟という判断によって、それを笑い話にしてしまうマナステラの国務卿たち。
確かに〝現実的でない〟話かもしれないが、それが〝現実〟なのも事実である。
「ノンヒュームたちの知恵の源泉を詮索するのは一応措くとして……?」
「イラストリアを羨んでばかりいても仕方がないだろう。マナステラの現況を改善する手立てについて話したいが?」
「うむ」
「いいだろう」
クロウにとっては幸いな事に、議論はより〝現実的な〟方向に舵を切った。
「やはり視察しか無いだろう。……イラストリアのノンヒューム繁栄の謎を含めて――な」
他の面々もそれには異存が無いようであったが、
「新年祭を控えて慌ただしいこの時期にか? 迷惑顔をされるのがオチではないのか?」
「うむ……」
こんな時期に視察団など派遣したら、向こうだって好い顔はしないだろう。
「いや……視察団派遣に拘る必要はあるまい。幸か不幸か、バンクスにはパートリッジ卿が居座っている」
「あの御仁か……」
「我々からの頼みなど、好い顔はしないだろうな」
「いや待て、今回はロイル卿も向こうにいる筈だ。確か二人は顔馴染みであったと聞く」
「ふむ……成る程……」
「既にロイル卿には、向こうで足掛かりを作るべく依頼しているし……何より、放って置いても新年祭を具に見聞してくるだろう」
「うむ。ロイル家の者は代々好奇心が旺盛だからな」
「帰国してからその報告を聞けばいいか」
――というところに落着する。そして……
「新年祭はそれでいいとして、エルギン……もっとはっきり言えば『ノンヒューム連絡会議』の動きについてはどうする?」
どちらかと言えば、マナステラが探りを入れたいのはこちらの方だ。
「さっきも言ったが、新年祭を控えて多忙な時期にのこのこ顔を出したりしたら、相手の心証を悪くするだけだぞ」
「行くだけ行って挨拶は後廻し……というのも外聞が悪いか」
う~むと考え込む国務卿たち。
「どこかに手頃な……エルギンに顔を出しても不自然でなく、かつ疎まれないような人材がいればいいのだがな」




