表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1340/1812

第二百四十七章 新年祭~開幕前~ 2.新規高級菓子

 クロウこと(からす)丸良志(まるながゆき)は曲がりなりにも歴史学科卒の筈であるが、歴史学徒として西洋史に通じているとは言い難い。どちらかと言えば雑知識(トリビア)の方を充実させているのがこの男である。しかし食文化となると話は別で、職業柄――地球での本業はラノベ作家――一通りの(雑)知識は身に着けていた。

 そんなクロウの目から見ると、こちらの世界の文化――魔法を除く――は概ね、地球では中世と呼ばれる時代のそれに類似していた。勿論、食文化もその例に漏れていない。


 そういった事情を勘案すると、クロウとしてはホイップクリームやチーズケーキといった西洋菓子の王道要素を提案したいところなのであるが……



(……材料のミルクやクリームチーズは、一年を通しての安定供給に不安があるし、出来上がり後の日保(ひも)ちの問題もあるしな)



 日保(ひも)ちの問題はマジックバッグで解消できるだろうが、逆に言えばマジックバッグ抜きでは解決できないという事だ。王侯貴族だけが相手ならともかく、庶民の間で流通するのは難しい。いや、上流階級限定と銘打って提供する事はできるだろうが、そうすると肝心のクロウたちがその恩恵に(あずか)れない。

 それに、流行の裾野が狭いうちは、新製品の開発なども(はかど)らないだろう。今後の新規開発の全てが、ノンヒューム任せクロウ任せになるのも不本意である。



(……後々の事も考えれば、応用性とか拡張性の高いものがいいんだろうな)



 要はアレンジの利く技法や素材を使うという事になる。

 その上に、材料の入手が()(ほど)に困難でなく、出来上がったものがそれなりに日保(ひも)ちする……そういう都合の好い菓子があるだろうか?


 実は――クロウにはその心当たりがあった。



『アーモンド――この国風に言うとアルマンか?――の入手は問題無いか?』

「アルマン……ですか?」

「イラストリアじゃちと寒いみてぇで、栽培は盛んじゃねぇですが……」

「入手だけなら問題無く」

『ふむ。だったら、アルマンを使った菓子があるんだがな』



 クロウがアーモンド――こちらの世界ではアルマン――の事を知っていた理由であるが、何の事は無い、ダンジョン村の作物候補として調べた事があるだけだ。

 テオドラムはイラストリアより南にある分少し暖かいし、栽培だけなら可能そうではあったのだが……



〝アーモンドって、チョコレートとの組み合わせは、鉄板ですよね?〟

〝そんな……作物を……()りに()って……テオドラムで……栽培というのも……〟

〝後々面倒な事になりませんか? (ぬし)様〟



 ――という懸念が眷属たちから出されたため、作物候補から外した経緯(いきさつ)があったのである。

 

 だが、イラストリアに提供する菓子に使うというのなら、何ら問題は無い筈だ。



(アーモンドを使った菓子と言えば、ドラジェにフィナンシェにマカロンか……うん、別に問題は無さそうだな)



 それらの菓子について簡単に説明したところ、ノンヒュームたちの視点でも問題は無さそうだという事になり、取り敢えずは持ち帰って検討する事になった。来年の五月に少量を提供するだけなら、材料の入手も難しくはなさそうだが、その後も安定して供給できるかどうかは、もう少し検討を重ねる必要があるだろう。



アーモンド(アルマン)の糖衣がけかぁ……」

「アルマン以外のナッツでも作れそうだな」

『あぁ、作れるぞ(……プラリネっていったっけな?)。糖衣の作り方を一捻りすれば、色々と応用が利くからな』



 ――という具合に、よせばいいのにクロウはカラメルソースやキャラメルの作り方まで伝授するのであった。……懲りない男である。



『さて――貴族向けの菓子は何とか目処(めど)が付いたようだが、庶民向けの方はどうするんだ?』



 ノンヒュームたちの言に()れば、或る意味こちらが本番の筈。如何(いか)なる手立てを考えているのか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ノンヒュームが新しいお菓子を用意する理由付けが薄いかな 別にあの程度の理由なら今回新お菓子はなくても良いよなって思ってしまう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ