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第二百四十六章 シュレクをめぐって 4.クロウ(その4)【地図あり】

 難しい顔で(しばら)く考え込んでいたクロウであったが、やがて(おもむろ)に顔を上げると、



『一つ聞きたい。行商人を呼び込むとして、どこから呼び込むつもりだ?』



 シュレクの位置関係を考えると、一番考えられそうなのはモルヴァニア、次いでヴォルダバン辺りではないかと睨んだクロウであったが、


挿絵(By みてみん)


『それが……その辺りが(いささ)か微妙でして』

『微妙?』



 ()得要(とくよう)(りょう)な顔のクロウに対して二名――および元・テオドラム軍人のペーターとハンス――が語った内容は、何と言うか、テオドラムの国際的な立ち位置を()く体現したものだった。


 テオドラムはその歴史からして、内陸国に追われて流離(さすら)った者たちが現在の場所に建国したという経緯があるため、内陸国――と言うか、沿岸国以外の国々――との仲が非常に悪い。取り分け強く(いが)み合っているのがマーカスであるが、モルヴァニアとの仲も決して(よろ)しくはない。

 なのでテオドラムを訪れる行商人に対しては、その出身を訊かない事が暗黙のマナーになっているという。表向きはヴォルダバンの商人という建前(たてまえ)になっているそうだ。



『それがどうかしましたか?』

『あぁ、いやな。他国の行商人に渡す換金物資として、塩はどうかと考えたんだがな』

『『塩――?』』

『あぁ。「(ふな)()み島」ならダンジョン転移で簡単に行けるし、海水から塩を分離するのも、ダンジョンマジックと錬金術を使えばあっと言う間だからな』

『『『『『………………』』』』』



 オルフとネスの二名をはじめ、居並ぶ眷属たちは唖然とした表情であるが、クロウにとっては至極当然の話であった。何をそこまで驚いているのだ?



『それで……内陸にあるモルヴァニアの商人になら、塩は良い取引材料になると思ったんだが……ヴォルダバンの商人が相手だと難しいか?』



 渋い表情のクロウであったが、



『いえ……それは大丈夫ではないでしょうか』



 助け船といった感じで異論を呈したのは、元・テオドラム軍主計士官のハンスであった。



『一口にヴォルダバンと言っても、その国土は東西に伸びています。内陸部では充分に塩の需要があるかと』

『ふむ……だったらいけるか?』



 考え直した様子のクロウに対して、別視点からの見解を追加したのがシャノアであった。



『あ、あのねクロウ……もしクロウがチキューで使っているような塩を考えているんなら、仮令(たとえ)沿岸国が相手だって売れると思うわよ?』

『ん? 何を言っているシャノア?』



 海沿いの国に向かって塩を売るなど、一体何を血迷った事を言い出したのか――と言いたげなクロウであったが、シャノアの言い分には一理も二理もあった。



『だって……あんなに白くて混じりものが無い純粋な塩、どこに出しても売れない訳が無いわよ』

『あぁ……確かに』

『同じ塩と言うのが躊躇(ためら)われるほどに、精製の度合いが違いましたな』



 シャノアのみならず側近たちからも同意の声が上がるに及んで、これはダンジョンマジックで塩を作る時には注意すべきかと気付く。

 彼我の価値観の違いから、危うくボロを出すところだった。忠告してくれたシャノアたちに感謝せねばなるまい。



『しかしご主人様、村の者たちが塩を入手できた事情については、どういう理由をお考えでございますか?』

『ん? 単にダンジョンから得られた――でいいんじゃないか? 「廃坑」は元々鉄鉱山だったんだし、鉄も塩も鉱物(ミネラル)という点では変わらんだろ?』

(((((そうかなぁ……?)))))

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁたそうやって、戦略物資をポンポン放り込む…… 世に混乱を齎すダンジョンマスターにふさわしい行いよw
[一言] 「海があるから塩!」っていうのは日本人の発想で 世界の製塩の4分の3が岩塩、塩は内陸で作るものって言う認識の方が普通だそうで
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