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第二百四十五章 イスラファン鈍刀乱麻 7.ヤルタ教・ハラド助祭@ヤシュリク(その2

「……アムルファンとの仲がおかしくなっている事に(かんが)みると、アムルファンの代わりをイスラファンに求めた……あり得そうな話だな」



 交易相手というならイスラファンは申し分の無い相手国だろうし、イラストリアの隣国という位置関係を考慮すれば、イスラファンを介してイラストリアの動きを察知できる可能性も……



「……いや、さすがにそれは虫が好過ぎるか」



 テオドラムでなくイスラファンの立場に立って考えてみるがいい。日の出の勢い(笑)のイラストリアとの友誼を切り捨ててまで、落ち目のテオドラムと結託するだろうか。



「……あり得んな」



 テオドラムにしたところで、それくらいの事は解っているだろう。


 という事は……テオドラムとしても今の時点では、イスラファンに軽く(よしみ)を通じておくという程度なのではなかろうか。



「その下調べというなら納得もいくが……しかし、ベジン村に執拗な(こだわ)りを見せているのはなぜだ?」



 やはりベジン村という疑問点に回帰する。やはり多少は無理をしても、ベジン村に密偵を送り込むべきだろうか?



「いや、その前に……テオドラムの目には、ベジン村はどう見えているんだ?」



 テオドラムがベジン村に執着するというなら、ベジン村には執着に値する何かがあるという事であり……テオドラムはそれを察知できたという事になる。……それも、本格的に調査員を派遣する()の段階で。



「むぅ……改めて前後関係に目を向けると……確かに少しおかしいか?」



 つまり――テオドラムは現地へ調査員を派遣する事無く、風聞だけでベジン村の価値に気が付いたという事になる。なら、不肖この自分にも、テオドラムと同じ事ができる筈ではないか。



「ベジン村に関して流れている噂、そして――テオドラムがそこまで欲しているものとは……ダンジョンか?」



 思いがけないキーワードが転がり出て来た事で、ハラド助祭も少し慎重になる。軽く一休みを入れる事にして、(こん)を詰めた頭を少し休ませる。

 愛飲している茶を飲んでリラックスした後に、改めて先の問題を考えてみるが……



「……テオドラム国内には、今現在二つのダンジョンがあると聞く。しかし、その一つは毒と呪いの坑道であり、もう一つは国境線上に突如現れた()の『災厄の岩窟』……」



 「災厄の岩窟」については噂以上のものは知らないが、何でも鉱物に特化したダンジョンだという。少なくとも、ダンジョンモンスターの素材や魔石が得られたという話は聞こえて来ない。



「ダンジョン素材が払底(ふってい)しているのか? ……待て。テオドラムは元々、イラストリア領内にある『ピット』とかいうダンジョンを利用していなかったか? ……いや……そう言えば、何かの報告書で読んだ気が……」



 積み上がった資料の山から該当する報告書を探し出すのに少し時間がかかったが、そこで見つかった情報は、「ピット」の活動が凶悪化して、素材を得るどころか近寄る事すらできなくなっているというものであった。



「……テオドラムがダンジョン素材を求めて、ベジン村に現れた可能性のある『ダンジョン』を探っている可能性は捨てきれん。……真実ベジン村界隈にダンジョンがあるかどうかは別にして、テオドラムがそこまでダンジョンを欲しているという事は……これは頭に入れておいた方が良いかもしれんな」



 ふーむと溜息を吐いたハラド助祭であったが、ここで改めて気になる事ができてきた。



「……ヤルタ教の勢力下にダンジョンが無いせいで話が遠くなっていたが……テオドラムの反応を見る限り、もう少しダンジョンについても()(づる)を伸ばした方が良いのかもしれん。そのためには、冒険者ギルドとの仲を深めるべきなのだろうが……」



 生憎(あいにく)な事に、ヤルタ教が勝手に認定した「勇者」が立て続けにダンジョンに敗れ去った事で、冒険者ギルドとの仲は微妙なものとなっている。関係改善を図るべきなのであろうが、自分たちが必要以上に(へりくだ)る事無しにそれを()すというのも、案外と難しそうな気がする。

 まぁ、その辺りはお偉方が考えればいいだろうとスルーしかけたところで、



「いや待て……そう言えば、落ち目になっている冒険者ギルドが無かったか?」



 ノンヒュームに喧嘩を売ったばっかりに、冷や飯食いの立場に甘んじている冒険者ギルドがあると聞いたような気がする。

 確か――バレン男爵領のギルドと、もう一つ……



「……ヴァザーリか。……イスラファンの隣だな」

本日21時に「ぼくたちのマヨヒガ」更新の予定です。宜しければご笑覧下さい。

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