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第二百四十五章 イスラファン鈍刀乱麻 4.テオドラム経済情報局調査員@ベジン村(その2)

 何やらおかしな話になってきているが……ナイハルの冒険者ギルドが調査員を差し向けたのは、単にダンジョン説をぶち上げて確認を迫ったのがナイハルの金貸しだったというだけだ。偽装も何もありはしないのだが、〝まず疑って掛かれ〟を旨とする調査員、それもテオドラムという他国者の目には、また別の絵が浮かんで見えたようだ。



「しかし……ナイハルがこうもヤシュリクを蚊帳(かや)の外に置こうとする理由が解らんな」



 ――そんな事実は無いのだから、理解できないのが当たり前である。



「どうする? ナイハルまで足を伸ばすか?」

「ふむ……」



 一同(しばら)くその選択肢を検討していたが、



「……いや、ナイハルが実際に町ぐるみで秘匿に動いているとすると、自分たちが行っても成果を上げられるとは思えん」

「だな。(むし)ろ警戒されるだけだろう」

「この手は悪手か」

「だが、ナイハルを全く調べないというのも……」

「それだ。この件に関わっているのは、ナイハルの冒険者ギルドという公算が大きい。なら、冒険者ギルドの事は冒険者ギルドに任せるのが一番だろう」

「……我が国の冒険者ギルドを通じて探りを入れると?」

「上手くいくかどうかは別としても、警戒させる事には変わらんだろう?」

「そこで間に一手間入れる。イラストリアの……確かバレンとかいう町の冒険者ギルドに伝手(つて)があっただろう?」

「あ……」

「その手があったか……」



 (かつ)てテオドラムでは、〝冒険者ギルドを通して、モローのダンジョンについての情報を集める〟という方針が閣議決定されており、その方針に(のっと)って、〝ダンジョンの情報を共有するために、イラストリア・テオドラム・マナステラの冒険者ギルドの間で繋がり(コネクション)を持つ〟という政策が採られている。現状では定期的な会談(カンファレンス)のようなものが持たれている程度だが、それでも伝手(つて)には違いない。



「元々がダンジョンへの対策として持たれた繋がりな訳だから、ナイハルにダンジョンの事を問い合わせるのはおかしくないだろ?」

「確かに。そういう名目がある以上、お偉方も首を横には振らんだろうな」

「バレンも我が国との結び付きは無くしたくないだろうし……いけるかもな」



 自分たちがナイハルを訪れる事に一掬(いっきく)危惧(きぐ)があるのなら、それに代わる対案を示してやればいい。この提案を(もっ)てナイハルの件にはけりを付けよう。



「……ナイハルの件はそれでいいとして、ここでの調査はどうする?」

「どうするもこうするも、もうできる事は残ってないだろう」

「ダンジョンの魔力を探知する魔道具、あれが借り出せてたら別なんだが」

「国内での使用が優先だとして、借り出しを却下されたからなぁ」



 イスラファンの冒険者が調査に使用した魔道具、あれと同じものが、実はテオドラムにも存在していた。先に述べたバレンの冒険者ギルドから、参考までにと提供されたものである。ただしテオドラム王国にしてみれば、自国内にダンジョンが存在している、もしくは今後発生する危険性があるかどうかを判断する方が優先であり、他国に持ち出させる暇など無いとして却下されていたのであった。



「なら、ここでの調査は打ち切って、一旦ヤシュリクに戻るか?」

「いや……その前に、何かが出て来たという地崩れの跡、あれを見に行った方が良いんじゃないか?」

「あぁ……確かに」

「現場を確認してはいなかったな、そう言えば」



 とりあえず実物を見てみようという事に衆議一決して現地へ(おもむ)いた彼らは、そこが綺麗に埋め戻された挙げ句、周辺部の緑化が――モンスターを呼び込まないよう慎重にではあるが――進められているのを見て唖然とする羽目になるのだが……それについてはまたどこかで触れる機会もあるだろう。


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