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第二百四十二章 善人(?)たちの夜 19.「文明論の概略」(その3)

「それにエルフは弱くはない。少し前にもバレン男爵軍の侵攻から、見事に村を護った実績がある」



 又候(またぞろ)ヤバそうなネタが目先にチラついたのを感じ取ったクロウが、()(たび)話題の転換を図る。



「まぁ、この問題についてはここまでにしましょう。次に気になった点ですが――」

「まだあるのかね?」



 クロウの第二ラウンド宣言に、情け無さそうな声を上げるマーベリック卿。万全と思っていた持論の根底に巨大な欠陥があるのを指摘されて充分凹んでいるのだが、この上更に追い討ちが待っているというのか。



「マーベリック卿のお考えは、エルフたちの――或いはノンヒュームのと言ってもいいかもしれませんが――現在の社会形態から導き出されたものとお見受けしますが、彼らが大昔から一貫して同じ社会形態を取っていたのか……言い換えると何らかの転機があって、それまでの社会形態から現在のようなものに変わった可能性については、どうお考えですか?」



 一転して異なる方向からの追及を受けたマーベリック卿は渋い顔だが、それでもこの批判は予測の範囲であったらしい。……いや、予測の範囲であったというだけで、満足に退ける事はできないようであったが。



「無論、不肖この私としても、現在の常識から過去を推し量る事の危険は理解している。一応、可能な範囲で訊ねてはみたのだが……〝ずっと昔からこうだった〟という答しか返って来なくてね……クロウ君の言いたいのは、伝承にすら残っていないほどの太古にどうだったかという事なのかね?」

「えぇ。単なる憶測に過ぎませんから、水掛け論になる可能性はありますが……実際にシャルドの遺跡の件については、ノンヒュームたちも知らなかった訳でしょう? 遺跡と同じかそれ以上に昔の事であれば、伝承が途絶えていてもおかしくないかと」

「うむぅ……」



 確かに、双方確固たる証拠を持ち合わせていない以上、有った無かったの水掛け論に陥る可能性はある。UFOとかUMAと同じようなネタではあるが、()りとて検討もせずに無視できるかと言うと、それはそれで悪手のような気がする。



「現在のエルフは森に引き籠もりがちで、人族との交流は()(ほど)に緊密ではないようです。エルフたちは自分たちの意思で、今のような社会形態をとっているのか? それとも、何か()むを得ぬ理由があってそうしているのか? ここでは議論の展開上から、後者の可能性を論じてみましょう」



 ふむ――と(うなず)いたマーベリック卿であったが、ここで外野から異論が飛んだ。



「ちょっと待てクロウ。それは――さっきまでの議論とは食い違わないか?」



 つい先程までは、〝エルフたちは大規模な国家を建設する必要が無かった〟と論じていたのに、今度は一転して〝エルフたちは何らかの理由によって、それまで維持していた国家を解体せざるを得なくなった〟というような議論になりそうなのだから、これはルパの当惑と異論も無理からぬ事ではある。

 が――それに対するクロウの返答は、素っ気無いまでに簡潔なものであった。



「さっきとは別口で、こういう考え方もできるって事だ。……続けるぞ?」



 多少の当惑を浮かべつつも(うなず)いたルパを横目に見て、マーベリック卿が再び口を開く。



「戦乱かね?」

「それも考えられますが、エルフたちが未だに旧態に復していない――飽くまで議論を進める上での想定ですよ?――事を考えると、その脅威は今も存在している……少なくとも、潜在的な危険は去っていないと考えるべきでしょう」

「ふむ……と、言うと……?」

「考えられる可能性の一つは疫病です。それも大規模な」

「疫病……」


この話はフィクションです。

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