表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1294/1810

第二百四十二章 善人(?)たちの夜 12.悪巧みのお誘い(その2) 【地図あり】

「いや――それについては()(しょう)この(わし)も、()いてはイラストリア側も危惧(きぐ)しておる。じゃから、最初は(わし)の方で上手く()(くる)めておくので、お主には先程も話題に上った〝エルフの美術史を専攻する学者〟を探すようにと献策してもらいたい」

「……マナステラ(く に)にそんな人材がいるかどうか判りませんが……」

「おるおらんに(かか)わらず、献策だけはしておくべきじゃろう。マナステラ在住のノンヒュームたちには、連絡会議とやらの方からも話が行くであろうが、じゃからと言ぅてマナステラ王国が手を(こまね)いていい――という訳ではないからの」

「はぁ……」



 確かに、人材を探すというポーズだけでも、マナステラの面目を保つ一助にはなるであろう。逆にそれすらしなかったとあっては、マナステラの面目は地に堕ちる事になる。()して、その原因が誰か(・・)の報告不備にあったとなると……



「わ、解りました。……参考までにパートリッジ卿(オールド・ビル)がされるという『報告』の内容をお訊きしても?」

「うむ。〝エルフと人族(ヒューマン)が太古から交流していた〟などとは、現時点では断定できぬ。これは学者としての(わし)の意見でもある」



 マーベリック卿の方をチラ見すると、こちらも同意を示すかのように(うなず)いている。してみると、これは学者としても真っ当な見解・態度であるらしい。



「じゃによって報告内容は、〝出土品の特徴からは、両者に交流のあった可能性が示唆される〟――という曖昧(あいまい)な言い回しに終始するつもりじゃ」

「……それだけでも充分にヒートアップすると思いますが……」

「そこでシャルドの位置関係が物を言う事になる。何せ()の地の東には、『神々の東回廊』と呼ばれる深い山林が横たわっておる。そしてその山林は、マナステラにもその末端を延ばしておる」

「あぁ……成る程」



挿絵(By みてみん)



 実際にはマナステラよりもモルファンに接する範囲が大きいが、そこは華麗にスルーするマナステラ出身者の二人。



「……つまり……我が国でも同じような遺跡が発見される可能性が……無くもない……と?」

「実際に可能性はあるじゃろうよ。遺憾ながらマナステラは、遺跡の発掘になど関心を向けておらんからの」



 ここで「祖国」という名詞を使わず、(かたく)ななまでに「マナステラ」呼ばわりする辺りに、パートリッジ卿の鬱憤(うっぷん)が見え隠れしている。ただ――それでも言っている内容は事実であった。……まぁこのご()(せい)に、国が考古学的発掘をバックアップする事の方が稀なのであるが。ちなみにシャルドの古代遺跡はイラストリア王国が発掘調査を主導したが、これは黄金製品(かねめのもの)(まと)まって出土したためであって、(むし)ろ例外的なケースに属する。

 余談はともかくとして、マナステラではそういった発掘調査がほとんど()されていない現状に(かんが)みると、重要な遺跡が未発掘のまま眠っている可能性も無視できない。

 マナステラ上層部の愚物どもなら〝(ただ)ちに発掘を!〟と、声高らかに(わめ)くかもしれないが、それより先にシャルドの調査に一枚噛むのが本筋であろう。



「つまり……私が行なうという『提言』は、それを踏まえたものになる訳ですね?」

「そういう事になるの」



 途方に暮れたように溜息を()きつつも、ロイル卿はこの提案を受け容れた。受け容れるより他にどうしようもないではないか。

 祖国を手玉に取る陰謀の一端を担がされているような気になるが、ロイル卿自身がやるべき事はどこから見ても真っ当な行為で、誰からも非難される()われは無い。

 いや――それを言うならパートリッジ卿がやる事にも、どこにも批判される部分は無い。こっちで判明した事実を伝えるだけ。……ただ、その伝え方に一工夫しているだけである。



「ふむ……次に、ルーパート君にお願いなんじゃが……」

「ぼ、僕ですか?」



 思いがけない陰謀に巻き込まれそうな気になって、少しばかり浮ついた声が出たが……ルパへの依頼も実に真っ当なものであった。



「父にこの件を伝えてほしい……ですか」

「うむ」

これにて本年の更新は終了となります。新年は五日から更新再開の予定です。

それでは、良いお年を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ