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第二百三十九章 オドラント 3.「間の幻郷」ドロップ品案件(その3)

「何を作るって……ダンジョンのドロップ品では?」



 今一つエメンのアドバイスが理解できていなかったようだ。



「いや、だからな……つまりナイフみてぇな武器を作るのか、贋金貨とかの(たぐい)か、それとも宝飾品(アクセサリー)とかなのか、そいつを先に決めねぇかって事だ。それによって、準備するものとかも変わってくるからな」

「あぁ、成る程」



 (ようや)くエメンの助言が()に落ちた様子で、ハンスは改めて考える。



「武器――は、(まず)いですかね。マナステラの新ダンジョン用に、ご主人様が用意されるみたいですし」

「――だな。『呪いの装備作成キット』とかを使うって張り切ってらしたし。どのみち剣とかだと俺一人じゃ造れねぇしな」

「……ご主人様にお願いするのは……駄目ですよね?」

「新ダンジョンのドロップ品と被っても(まず)いし……(第一よ、あのご主人様がお造りになると、(ろく)なもんはできねぇんじゃねぇのか?)」



 後半を小声で(ささや)いたエメンに応じるかのように、(おの)ずとハンスも小声になる。



(「ですよね……ご主人様がマナステラのダンジョン向けに用意するっていうドロップ品も、皆さん随分と警戒しておいででしたし……」)



 何しろクロウには、いつぞやダンジョンのドロップ品として、()りにも()って自動小銃なんてものを提案しようとした前科がある。

 それはまぁ笑い話としても、クロウに武器を造らせた日には、()(ちょう)など事象の地平の彼方(かなた)に置き忘れた代物が出来上がるのは間違い無い。


 ――()くして、「武器」という選択肢が早々に抹消される。

 次なる選択肢は、



()()たりですけど――金貨とかはどうですかね?」

「そりゃ、俺の十八番(おはこ)っちゃ十八番(おはこ)だがよ……(まず)かぁねぇか?」

「ミドの金貨で大騒ぎになってますしねぇ……ここで新しい古代金貨を持ち出すと、また面倒な事になりそうですよね」

「かと言って、現用金貨の贋金を持ち出すのも、そりゃあそれで(まず)いよな?」



 クロウがエメンに命じて造らせた〝マナステラ金貨の贋物〟は、本物と較べても遜色無い――どころか、本物を優に上回りそうな高品位となった結果、本物と同じように流通する事が認められている。ここで又候(またぞろ)〝本物と同等以上の品位の贋金貨〟などをドロップさせた日には、事態が一気に紛糾するのは間違い無い。

 クロウたちもそこまでの機密情報は察知していなかったが、ごく一般的な良識として、〝贋金をドロップさせると事態が面倒になる〟くらいの認識は持ち合わせていたので、この案も早々に没となったのは幸いであった。


 そうすると……



「残ったのは消去法で宝飾品(アクセサリー)ですか……」



 ――まぁ、妥当と言えば妥当、順当と言えば順当な選択であろう。

 ただし、これにも問題が無い訳ではない。



「けどよ……宝飾品(アクセサリー)をでっち上げるつったって、俺ぁ流行(はや)りのデザインなんか知らねぇぞ?」

「それは僕も同じですけど……」



 贋作者とはいえエメンの本領は贋金作りであるし、素人学者たるハンスの専門は歴史である。史料としての視点から見た事はあれど、流行(はや)りのデザインなどとは無縁である。


 ……いや……?

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