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第三十三章 冬支度 4.バンクスの町にて

越冬予定地に到着です。

 シャルドの町跡を()っ――た事にし――て二日後、俺たちはバンクスの町に着いた。この町は貴族領でなく自由都市で、代表者たちが合議制で町を運営しているらしい。昔の日本の堺みたいな感じかね。あと、重要な事だがヤルタ教の力は強くないそうだ。様々な場所から様々な種族がやって来るという交易都市の性格から、亜人排斥のヤルタ教は相手にされないらしい。いい事だ、うむ。いい事だ。


 とりあえず町を回ってみて、長逗留(ながとうりゅう)できそうな宿を探――そうとして気がついた。俺にはマンションでの生活も、他のダンジョンでの仕事もある。ここにずっといるわけにはいかんのだが、宿を空けがちなのをどう説明しよう?


 結論を言えば、悩む必要はなかった。ここバンクスの周辺は冬場の積雪がほとんど無く、冬の間も各地から商人や隊商が引っ切り無しに出入りしている。薬草調べの名目で、あちこちに出かけたり聞き込んだりしていると言えば納得してもらえた。むしろ宿を空けている間も宿代を受け取るのに引け目があるようだったが、そこはいつ戻るか判らないからと言って受け取ってもらった。

 一泊銀貨二枚半。三ヶ月の契約で九十日分。総計、銀貨二百二十五枚、金貨二枚と銀貨二十五枚。手持ちで充分まかなえる。ありがとうホルン、そしてダイム。


 商人宿「樫の木亭」


 ここがこの冬の間の俺たちの――表向きの――拠点という事になる。借りた部屋は三階の隅。隣室は物置に使われており、お節介な隣人に悩まされる心配はなさそうだ。無遠慮な隣人ってのは始末に負えないからな。


 毎朝この部屋にログイン――おかしな言い方だが一番しっくりくるんだよ――する必要があるので、部屋の隅にダンジョンゲートをこっそり設置しておく。幸い部屋には内側から鍵がかけられるので、勝手に中を覗かれる恐れはない。この宿を選んだ理由の一つがこれだ。


 エッジ村にいたクロウとしてここに来ているわけだから、ここでは素顔で過ごす必要がある。従魔の事はどうしようかと思ったが、一応隠しておく事にした。後でばれたらその時の事だ。


 バンクスでの拠点が決まったので、部屋に荷物を置いてから、町の中を見て回る。町の規模はバレンやエルギンより大きく、ヴァザーリとほぼ同じくらいか。今いるあたりは商人の往き来が多く、雑然とした感じが否めない。家の大きさや建て方などもバラバラだが、不思議と嫌な感じはしない。貴族領じゃないからその手の屋敷もごく少なく、庶民色が強い町と言える。町に行き()う人々は、衣服も人種も様々で、亜人も普通に()じっている。その点ではエルギンと同様、いや、それ以上かも知れないな。


 宿の前から歩いていって、市場、広場、商店街、教会、住宅、呉服屋、家具屋、住宅、教会、商店街、広場、礼拝堂、商店街、学校?、馬車の発着場か?、市場、広場、教会、って言うか、教会多いな!

 聞いてみると、町の住民が信じる宗教がバラバラなので、宗教の数だけ教会や礼拝堂があるらしい。十以上あるのは確かだが、実際の数は知らんとの事。


 ざっと見た限りじゃ、スラムに相当する場所が見当たらない。後で聞いたところによると、人の出入りが激しいもんで、スラムが形成される暇がないそうだ。この町で仕事がない者は、あっさりと町を出て行くらしい。良くも悪くもドライな気風の町みたいだ。


 まあ、そういう気風なら、俺がちょくちょく姿を消しても関心を持たれる事は無いだろう。ある意味では、ここは活動するのに都合がいい町なのかもしれない。

明日は挿話になります。

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