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第三十三章 冬支度 1.洞窟にて

クロウが予想もしていなかった新展開になります。

 すっかり秋の気配も深まってきたある日のこと、洞窟に入ったところでハイファから質問が投げかけられた。


『ご主人様……皆とも……話しましたが……冬は……どうされますか?』

『ん? 普通にここで過ごしちゃ駄目なのか? ここも一応ダンジョンだから寒くはないだろ?』

『いえ……ここではなく……山小屋の……事です』

『うん?』

『ご主人様、あの山小屋で冬を越すのはちと(つろ)うございます。表向きの事ではございますが、山小屋を引き払う事になさいますか? また、引き払ったとしてどこへ行く事になさいますか?』

 あ……。


 考えてもみなかったが、確かにこれは(まず)い。


 実際に寝るのはマンションだし、それ以外では大抵ダンジョンに引き籠もっていたせいで気づくのが遅れたが、あの山小屋で冬を越すのはどう見ても無理筋だ。思い返せば村人たちは冬に備えて薪を集め、保存食作りに精を出していた。何の準備もしていない俺は、さぞや奇異に映ったろう。

 今から冬支度をするか?……いや、駄目だ。準備不足はさて()いても、冬籠もりなら山小屋にいないとおかしい。この辺りの積雪量は知らんが、それでもしょっちゅう山小屋を留守にしてたら疑われるのは間違いない。

 冬の間はどこかに移り住む、そう言う設定にするしかないか……。


『参考までに聞くが……他の村では冬の間どうしているんだ?』

『エルフは主な食糧を森の植物、一部は作物に頼っておるでのう。冬の間は引き籠もるのが普通じゃな』

『獣人は狩りが主体ですからな。冬の間も狩りをしておるようです』

『ますたぁ、狩り、しますぅ?』

 いや、無理だから。


『依頼で薬草を調べている身としては、どうするべきかな?』

『冬の間、どこか別の所へ行くしか無いんじゃないですか?』

 うん、やはりそれしかないか……。待てよ、しかしそうすると、精霊樹の爺さまに配給とかあれこれができなくなるぞ。


(わし)は冬の間は眠っているようなもんじゃから、気にせんでいいぞ?』

 うん? 爺さまは落葉樹なのか?


(わし)に限らずこの辺りの木々は、大抵冬には葉を落とすな。冬には精霊たちもほとんどやって来んし、眠ったように過ごすのが通例じゃ。ま、今年はハイファを通じてお主たちと話せそうじゃから、冬の間も退屈はせんじゃろうがな』

『うん? 起きているのに何も栄養を摂らなくて大丈夫か?』

『身体の方が眠っておるからな。たとえ甘露を戴いても、無駄になるだけじゃ』


 となると、どこへしけ込んだらいいものか。冬の間過ごしやすくて、静かで人目が無くて、冬の間そこで暮らすと言っても不審に思われなくて、うちの子たちを連れていても問題なくて、ダンジョンを設置できて、安全で、できれば買い物などに便利で、疑い深い隣人がいなくて、後は……。


『注文を付け過ぎじゃ、馬鹿者』

『人目が無くて過ごしやすく、安全で、なおかつ、そこへ行くと言っても不審がられないのは絶対条件だぞ? 無論ダンジョンも必要だし』

『済みません……そこまで……この国の地理には……明るく……ありません』

『マスター、村人さんたちに聞いてみたらどうですかぁ?』


 そうするか。

もう一話投稿します。

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