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第二百三十一章 折り鶴のメッセージ  18.ヴォルダバン サガンの町 商業ギルド(その2)

()(じょう)の問題は一旦()くとして、目的は何だと思う?」

「それは勿論、彼らが手に入れたという……む?」

「そうだ。そうすると幾つかおかしな点が出て来る。まず、彼らはなぜ唯々(いい)として【鑑定】を受け容れたのか」

「……鑑定されるまで、問題含みの品だとは気付かなかった?」

「という事は、彼らはその品が曰く付きのものだとは知らなかったという事になる。それ目当てにやって来たとするなら、(いささ)かおかしな事にならんか?」

「ふむぅ……」

(そもそも)だ、あの廃村で何がドロップするのかは(うん)(まか)せだという話じゃなかったか? なら、それ(・・)を目当てにやって来たという前提自体が怪しくなってくるだろう。その矛盾を解消しようとするなら――」

「……彼らはその品をドロップ品として入手したのではない……ドロップ品というのは表向きで、実際には何らかの取引で得たという事になる。しかし、そうなると今度は……」

「あぁ。今度は彼らが(ブツ)の正体を知っていなかった事、不用意に【鑑定】を受け容れたというのがおかしくなる」



 話の辻褄(つじつま)が合わなくなった事に、商業ギルドの職員たちも困惑を隠せない。

 実際、この件で何かを企んだのはダンジョンマスター(ク ロ ウ)の方であり、ダールとクルシャンクは何も知らずにそれに巻き込まれただけなので、部外者である職員たちが混乱するのも無理はなかった。



「そうなると……これは、〝違和感のあるドロップ品〟とは無関係なのか?」

「そう言うには出来過ぎのタイミングに思えるが……」



 議論推論の行き着く先が予断とは異なっていく事に、困惑を深める職員たちであったが、



「いや……時期という事を考えるなら、もう一つあるな」

「もう一つ?」

「あぁそうだ。『シェイカー』討伐隊の件を忘れた訳ではあるまい?」

「あ……」

「それがあったか……」



 「シェイカー」討伐戦の()(すう)については各国も関心を示していたようだし、実際に他国の密偵と(おぼ)しき者たちが確認されている。その密偵が、帰りしなにアバンに立ち寄ったと考えるなら……



「……時間的な辻褄(つじつま)は合うな、確かに」



 実際にダールとクルシャンクの行動はそのとおりのものであったのだから、矛盾が生じる余地は無い。



「では、そいつらが(ブツ)を手に入れたのは偶然か?」

「そう考えてもおかしな点は――無いな……」



 結論として――〝違和感のあるドロップ品〟については何も判っていない事になる。がっくりと(うな)()れる一同であったが、



「いや……まだ諦めるには早いだろう。()(ろん)(ブツ)がどこかへ流れたのは事実なんだ。それを手にした者はどうするか?」

「……どうする?」

「それは……あぁ、個人として入手したのなら、換金目的で手放すか?」

「成る程……それなら何かの情報が流れて来る事も期待できる」

「逆に、何の話も流れて来ないようであれば……(ブツ)は国の手に渡ったと考えられる訳か……」

「その二人組が後生大事に抱え込んでいる可能性も無くはないがな。普通ならそんな事はせんだろう」



 金になるかならぬか判らぬものを抱え込んでいても、銅貨一枚の利益にもならない。()して、今回目撃されたのは〝二人組〟。分け前という事を考えるなら、さっさと換金して山分けにするのが普通である。職員たちの考えは、それなりに筋の通ったものであった。



「しかし……二人組がどこかの密偵であった場合、何の情報も流れて来んのではないか?」

「その場合この問題の尻は、どこかのその国が持つ事になる。我々が気に病む必要は無い」

「成る程……」



 職員的には好ましい結論になりそうな気配を見て取って、一同の表情が(にわか)に明るいものとなる。余計な面倒を背負(しょ)い込みたくないのは誰しも同じである。



「とは言え、今後も注意だけはしておいた方がいいだろう」

「うむ。そいつらが何者だろうと、近場の国からやって来た可能性が高いだろう。耳を澄ませておいて悪い事は無い」



 和気(わき)藹々(あいあい)と話す彼らの中では、この一件は既に〝終わった事〟になっていた。

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